目次

1 検査 2 BCG 3 治療 4 接触者健診 5 外国人患者への対応 6 制度に関する質問 7 結核菌の消毒・保管・運搬

          


 1.検 査
 (1) 喀痰塗抹・培養検査
   ➢ 吸引痰等での塗抹検査
  
   気管支内視鏡検査に伴う各種検体、「咽頭ぬぐい液」、吸引チューブによる「吸引痰」や
  「胃液」で結核菌陽性となった時、感染性の高さについて、どのように考えればよいので
   しょうか?  
  
   
   上記の場合、結核の診断の有力な証拠となりますが、「感染性の高さ」の評価については
   根拠となる研究結果が乏しいため、可能な限り「喀痰検査」を実施したうえで、胸部X線
   検査所見(明らかな空洞の有無)や呼吸器症状、診断のきっかけ(健診発見か有症状受診
   による発見か)などの情報も含めて「感染性の高さ」を総合的に判断することが望まれま
   す。
   また、結核患者の気管支鏡検査を十分な防護がなく実施することや、これに立ち会うこと
   は感染性がある場合に感染の危険性が高くなると考える必要があります。



   ➢ 塗抹検査が±(ガフキー1号)の場合の対応
  
   喀痰塗抹検査が±(ガフキー1号)の場合、どう対応すればよいでしょうか?  
  
   
   塗抹検査が±(ガフキー1号)の場合、検体採取時や検査室内での交叉汚染、食物残渣な
   どによる偽陽性も考えられるので、再度喀痰を採取するか、再度の採取が困難な場合は、
   同一検体を用いて再検査を行うことが勧められます。
   また、診断のためには塗抹検査結果だけでなく、胸部X線検査や核酸増幅法の結果と合わ
   せて相互に矛盾がないか検討します。


   ➢ 塗抹陰性・培養陽性の感染性
  
   塗抹検査結果が陰性で、培養検査結果が陽性の時は、感染の心配はないでしょうか?  
  
   
   喀痰塗抹陰性で感染性が低いということは,検査に適した喀痰が採取されて、かつ、複数
   回(3回連続)検査を行って、いずれも塗抹陰性である場合を前提とします。この条件を
   満たした検査結果の塗抹が陰性であれば、疫学的には塗抹陽性に比較して感染のリスクは
   低いと考えられます。しかし、診断時の医療機関で検体として不適切な喀痰の塗抹検査結
   果が陰性であった場合,その後に紹介された医療機関での検査で、塗抹陽性となることも
   あります。

   一方、HIV感染が問題になっている米国の分子疫学調査に基づく報告では、患者の18%が
   塗抹陰性・培養陽性の患者から感染を受けていたとの報告があり、個々の事例における感
   染の可能性に関しては、接触者側の免疫学的な要因も考慮に入れる必要があります。
   よって、培養陽性で塗抹陰性の場合に感染性がないとは言えません。
   また、接触者健診における感染性の高さの判断については、胸部X線検査結果も合わせて
   検討する必要があります。(「接触者健診の手引き(改訂第5版)」P.21)
  
 *詳しくは結核研究所ホームページへ→ http://www.jata.or.jp/tp_detail.php?id=37



   ➢  MGITと小川培地による培養検査で結果が異なる場合
  
   MGIT(液体培地)と小川培地(固形培地)による培養検査で一方のみ陽性であった場合
   どう判断すればいいでしょう?
  
   
   菌量が非常に少ない場合に、検体中に培養可能となる結核菌が含まれる確率の問題でいず
   れかの一方の培養検査結果のみが陽性になることがあります。
   従って、検査方法によらず、いずれかの検体が陽性であれば「培養陽性」と判定します。




 (2) インターフェロン-γ遊離試験 (Interferon Gamma Release Assays ; IGRA)
   ➢ IGRAの適応年齢
  
   IGRA の適応年齢について教えて下さい。  
  
   
   
ここでは平成26年3月に改訂された「接触者健診の手引き(改訂第5版)」をもとに回答
   いたします。
   詳しくは結核研究所ホームページ「接触者健診の手引き(改訂第5版)」へ →
   
 http://www.jata.or.jp/tp_detail.php?id=37



   ➢  乳幼児へのIGRAの適用
   第4版までは、乳幼児におけるIGRA(QFT-2G)の感度不足を考慮して、ツベルクリン
   反応検査(以下、ツ反)を優先していましたが、QFT-3G とT-SPOT を用いた最近の研
   究成果を踏まえ、改訂第5版では ① 乳幼児に対してもIGRA を基本項目の一つとしIGRA
   とツ反の併用(受診者の負担軽減を考慮して、できるだけ同時実施)を推奨することとし
   ました。しかしながら、これは健診方法の大きな変更であり、健診の実施体制等の事情に
   よって ② ツ反を優先することも選択肢の一つとします。
   ただし、患者との接触状況等から感染リスクが高いと判断された事例には、IGRA を追加
   実施するとなっています。(先に実施したツ反で「結核感染あり(要精査)」と判断され
   た場合は、IGRA の併用を省略してよい。)



   ➢  高齢者へのIGRAの適用
   IGRA適用年齢の上限は改訂第5版でも第4版と同様に設定せず、「低まん延で高齢者へ
   の結核の偏在化が顕著な地域」においては,濃厚接触者と考えられる高齢者にもIGRA の
   積極的な実施を推奨しています。



   ➢  乳幼児の潜在性結核感染症(LTBI)の診断
   乳幼児の活動性結核(発病後)に対するIGRA の感度をそのまま乳幼児のLTBIにも適用で
   きるかは不明です。小児の結核感染診断におけるIGRA の有用性を検討したsystematic 
    review においても、IGRA は5歳未満の「未発病感染例」を正確に検出できない可能性が
   あることを指摘しています。
   このため、乳幼児のLTBI に対するIGRA の感度不足の可能性を考慮して、IGRA 単独では
   なく、ツ反の併用が望ましいと記載されており、たとえば、BCG 既接種の乳幼児の健診
   においてIGRA 陰性であっても、ツ反が「強陽性」の場合は「感染あり」とみなすなどの
   対応が考えられます。



   ➢  判定保留の考え方
  
   QFT-3GとT-SPOTの判定保留の解釈の違いについて教えて下さい。
  
   
   QFT-3Gの判定保留は、感染の可能性が高い場合(例えば、接触者健診において多くの陽
   性者が発見された場合)に、陽性と同様に感染者として扱うことにより陽性的中率を向上
   させ、感染者を見逃すリスクを小さくするために設定されています。
   T-SPOTの判定保留は、スポット数が8個以上の陽性あるいは4個以下の陰性の判定に対
   して、スポット数がわずか1~2個の違いの範囲(5~7個)は、検査の信頼性が低くな
   ることから再検査が必要な領域とされています。


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