目次

1 検査 2 BCG 3 治療 4 接触者健診 5 外国人患者への対応 6 制度に関する質問 7 結核菌の消毒・保管・運搬

          


 2.BCG
 (1) 接種に関して
   ➢ 上腕以外に接種を希望された場合
  
   皮膚炎等により上腕に接種できない場合や、美容上の理由で他の部位への接種を希望さ
   れる場合のBCG接種について教えてください。  
  
   
   
予防接種実施規則によってBCG 接種の場所は、「上腕外側のほぼ中央部」と定められて
   いますので、別の場所に接種することは認められていません。
 
   
皮膚の治療が必要な場合は、皮膚症状が改善された後に接種を行うことをお勧めします。
   アトピー性皮膚炎がひどく、BCG接種する部位がジクジクしているような場合は、皮膚
   がきれいになるまで待つことになります。副腎皮質ホルモン剤入りの塗布剤は、接種部
   位に塗っていなければかまいません。
   (平成25年改訂 BCG接種に関するQ&A集 森 亨監修)

  (参考)予防接種実施規則
   第五章 結核の予防接種
  (接種の方法)
   第十六条  結核の定期の予防接種は、経皮接種用乾燥BCGワクチンの懸濁液を上腕外
   側のほぼ中央部に滴下し、管針法により一回行うものとする。
   2  管針法は、接種部位の皮膚を緊張させ、懸濁液を塗った後、九本針植付けの管針を
   接種皮膚面に対してほぼ垂直に保ち、これを強く圧して行うものとする。
   3  接種数は二箇とし、管針の円跡は相互に接するものとする。

  

   ➢ 接種の針跡の数が少ない場合
  
   BCG接種の針痕が少ない場合、どのように対応したらよいでしょうか?  
  
   
   
BCG接種技術の評価のため、針痕数の調査が勧められており、良好な接種技術であれば
   平均15個以上の針痕が残るとされています。しかし、個々の被接種者において、針痕数
   が接種後の免疫能と相関するとは限らないため、針痕が少ないことを理由に再接種を行
   うことは勧められません。
   ただし、同じ接種者の集団について針痕を観察し、針痕数が全体的に少ない場合は、接
   種技術に問題があることもあるので、次回からの接種を改善し適切に行う必要がありま
   す。



   ➢ BCG未接種で定期のBCG接種の標準対象期間を過ぎた場合
  
   BCG未接種で定期のBCG接種の標準対象期間を過ぎた幼児や児童への接種は、どうすべ
   きでしょうか?  
  
   
   
1歳を過ぎた幼児に対しても BCG接種による免疫効果は得られると考えられ、結核性髄
   膜炎等の重症結核は4歳位までに多いことから、実施する意味があると思われます。  
   ただし、特定の疾患による場合を除き、予防接種法に規定された接種期間を過ぎてしま
   った場合、任意のBCG接種となるため費用負担が生じます。また、接種期間内の接種で
   健康被害が生じた場合、予防接種法に基づく救済制度の適用が検討されますが、任意接
   種では一般の医薬品の副作用と同じ「医薬品医療機器総合機構」に基づく救済制度の検
   討対象となります。
   そのため、結核高まん延国や地域に居住することが予定される等により、感染・発病リ
   スクが高い場合にのみ接種の検討することになるかと思います。




 (2) コッホ現象
   ➢ コッホ現象を疑った乳児のツベルクリン反応検査(以下、ツ反)時期
  
   コッホ現象を疑った乳児のツ反の実施時期について教えて下さい。  
  
   
   
接種したBCGによる免疫が成立する前にツ反を行うことが重要です。従ってBCG接種後
   1週間以内、遅くとも2週間以内のツ反の実施が勧められます。
   詳しくは結核研究所ホームページ(BCG接種におけるコッホ現象への対応)へ
   → http://www.jata.or.jp/rit/rj/bcg_nagai_21.12.18.pdf



   ➢ コッホ現象に類似した反応
  
   いわゆる「コッホもどき」(コッホ現象に類似した皮膚所見が見られるが、結核感染し
   ていない場合)とは、どのような症状のことでしょう?
  
   
   
結核に感染していなくてもBCG接種後2,3日以内に発赤等の反応が出現し、その後一
   度それらの反応が消退したのちに、接種後10日から2週間頃、再び反応が強くなる二相
   性となることがあります。最初の数日以内の皮膚反応と、およそ10日以降の皮膚反応か
   ら成り立っており、前者は非特異的な反応と考えられ、後者は通常のBCG初接種の局所
   反応の経過に一致します。
   真のコッホ現象では最初に強い反応が出て、それが緩やかに消退していくという単相性
   の経過をとります。
   詳しくは結核研究所ホームページ(BCG接種におけるコッホ現象への対応)へ
   →
http://www.jata.or.jp/rit/rj/bcg_nagai_21.12.18.pdf




 (3) 副反応
   ➢ 接種後腋窩リンパ節の化膿
  
   BCG接種後腋窩リンパ節の化膿には、どのような処置を行ったらよいでしょうか?  
  
   
   
BCG接種後、接種側の腋窩リンパ節が腫大することがあり、ほとんどが特別な治療をし
   なくても軽快しますが、時にリンパ節が化膿して皮膚に穿孔することがあります。
   この場合、局所の清潔に留意して経過観察し、抗結核薬は不要と思われます。




 (4) 膀胱癌のBCG膀胱内注入療法
  
   膀胱癌の治療でBCG膀胱内注入療法を受けた数カ月後に尿のPCRの結果、膀胱結核とし
   て届け出があり、イソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)
   の3剤内服治療を開始しました。BCG膀胱内注入療法とPCRの検査結果には関係がある
   のでしょうか? なお、この患者に、肺結核、腎結核の合併はありません。 
  
   
   
膀胱癌のBCG膀胱内注入療法では、週1回40~80mgのBCG製剤を6~8回、膀胱内に注
   入しますので、その副作用としてBCG菌が粘膜下層に肉芽腫を作ることがあります。
   BCG菌はウシ型結核菌を継代培養して弱毒化したワクチンであり、結核菌のPCRで陽性
   を示すことから、尿の結核菌PCRが陽性となることがあります。日本BCG研究所、結核
   研究所でヒト型結核菌とBCG菌の鑑別検査が可能です。
   治療終了後も培養またはPCRで長期に菌が認められる場合は、症状がなくてもイソニア
   ジド(INH)単独投与をすることもあります。
   頻尿、排尿時痛などがある場合はイソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)による治
   療が有効です。この場合、BCG膀胱内注入療法の副作用ですので、一般医薬品の健康被
   害救済基金の給付の対象として申請するのが適当かと思います。まれには胸部に陰影が
   現れる人もいますが、その場合はBCG菌かヒト型結核菌かを鑑別する必要があります。
   ただし、事前に尿路結核でないことを確認するのが前提です。




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