CONTENTS
 1 新しい体制下での地域結核対策計画の意義
 2 学校における結核健診マニュアルの概要
 3 新しい結核対策のあり方に関する総合検討会
 4 日・韓・中結核研究所学術会議
 5 第61回日本公衆衛生学会総会自由集会
 6 結核研究所活動報告


*訂正*
  配布した新報No.3の問診票(3ページ)に誤りがありましたので、お詫び申し上げます。
   質問6−補問*質問6で「はい」と答えた方へ ⇒ 「いいえ」
   修正した問診票は下部よりご覧下さいませ。


新しい体制下での地域結核対策計画の意義

結核研究所 所長  森 亨

地域格差に焦点を当てた対策へ

 新しい結核対策への厚生科学審議会の提言が出てから1年になる。この間、提言内容のうち「再接種廃止」「学校健診廃止」だけが平成15年度から前倒し実施となり、文部科学省側では、これに関する若干の代替策の導入が決められた。しかし、その他の部分は平成16年度に実施予定の法改正待ちで、足踏み状態となっている。
 提言以後の事態の展開や関係方面の反応などを併せて考えると、今後の対策のあり方において、ますます重要となる問題の一つとして「地域結核対策計画」が挙げられる。
 これは「地方自治の拡大」という行政のあり方の大きな流れに協調することだが、それ以上に日本全体の結核対策を向上させるために、どうしても不可欠な要素である。
 結核が大洪水のように日本中いたるところに渦を巻いていたころと違い、例えば罹患率で見て大阪市と長野県の間には6倍の開きがあるように、蔓延水準の凹凸が非常に大きくなっている。これに関連して、結核流行を左右する社会経済状態の格差やその質的側面も、地域により大きなばらつきがあることは言うまでもない。このようなときに全国一律の方法で対策を講じていれば、過剰と不足が生じ、全体として対策は低効率となるであろう。
 同時に、地域格差は先に述べた疫学的側面だけでなく、管理上の問題や対策資源の面でも大きくなっている。例えば、新登録患者中の菌陽性の割合は、一番高いところで86%(島根)、一番低いところで52%(岩手)となっている。これは診断の質の違いやサーベイランス精度のばらつきを反映していると考えられるが、対策立案の上で無視できない要因である。
 また、東京や大阪のように結核専門家などの人的資源が豊かな地域と、そうでない地域とでは攻め方もずいぶん違ってくる。だが、現実には資源に関する指標値が必ずしもよくない地域が、対策上好ましい結果を生んでいる場合もある。これはまさに地域によくマッチした対策計画が功を奏していることを示している。

地域の実情に応じたきめ細かな対応を

 実は従来も、このような地域の実情に応じた対策の実施は、国の結核対策の中で課題とされていた。都道府県別に設置される結核医療事業運営協議会や発生動向調査委員会などは、上記の目的で設置されたと言えなくもない。しかし、今後は、同じ課題について、これまでとは決定的に違う対応を考えなければならない。従来の結核対策は、国中で大鉈を振るって大木を倒していたようなものだが、今はそれよりはるかにきめ細かな方法を取らなければならなくなっている。さらに、同じ都道府県内においても対策を巡る条件には大きな格差があるので、これらも考慮に入れた一層きめ細かな対策が求められるところである。
 結核対策推進会議の重大な存在理由の一つに、この地域結核対策計画の立案・実施を効果的に推進することがある。関係者が相互の交流を通して自分の地域の対策を振り返り、また自分の経験を他の地域と共有する、そのようなフォーラムとして、この会議が成長することを事務局として期待している。






学校における結核健診マニュアルの概要
新しい結核健診の年間スケジュールと問診票を紹介

 平成15年4月より実施される小・中学校のツベルクリン反応検査及びBCG再接種の廃止を踏まえ、今後の新しい結核健康診断について、平成14年12月に文部科学省がまとめた「定期健康診断における結核健診マニュアル」の中の年間スケジュールと問診票を紹介する。なお、このマニュアルの要旨については、結核予防会が発行した複十字誌(No.288)をご参照いただきたい。

健診方法の転換と健診実施の流れ

 日本における結核罹患率は、高齢者が上昇し、若年者は低下している状況にある。先般、厚生労働省の厚生科学審議会は、従来、学校において実施している健診について、全員に実施する方法から、個別に集中して実施する効果的な方法へと転換することを発表した。
 さらに、小・中学校におけるツベルクリン反応検査及びBCGの再接種は、効率が悪いため、廃止することが決定された。しかし、学校全体にとって結核は依然として重要な問題であり、今後も引き続き結核管理に取り組む必要がある。
 健診を実施する際、学校や教育委員会において、どのような手順を踏む必要があるのか、その流れをここに示す。

          


問診票

ポイント!

ー遡6及び補問6-1については、小学校1年生にのみ質問する。

⊆遡1、質問2、質問3、質問5で「はい」、質問4で「はい」と答え、補問4-1の答えが世界保健機関の示す高蔓延国である者、質問6で「いいえ」のいずれかに該当する者は、原則として結核対策委員会での検討を要するものとする。

学校と教育委員会における年間スケジュール

学  校 教育委員会
10月 予算化
 ・結核対策委員会費
 ・結核問診票作成費
 ・精密検査費
1月 実施計画
 ・実施計画案の作成
 ・実施要項の作成
結核対策委員会設置
 委員選考・委員委嘱
2月 結核対策委員会における協議
 健診のねらい、
 精密検査実施機関の選定
3月 精密検査実施機関との契約
問診票の準備
通知及び報告様式の準備

 →管下の学校へ配付
4〜6月 事前準備と指導
 ・連絡調整
 ・会場準備
 ・器具等の準備
事前調査
 問診票、保健調査票
結核健康診断
結核精密検査
結核対策委員会での検討
 ・結核健診実施状況の把握
 ・精密検査対象児童生徒の管理方針の検討
 ・精密検査結果の把握
7月以降 事後措置
 ・結核の報告
 ・教育委員会からの指導
 ・治療必要
 ・経過観察
結核対策委員会
 (必要に応じ開催)
 ・患者発生時の対応
 ・地域の結核発生状況等の情報交換
 ・健康相談への対応
結核健康診断の評価・精度管理 結核健康診断の評価・精度管理

(対策支援部企画科 中西志乃)






新しい結核対策のあり方に関する総合検討会
結核対策の今日的な課題をめぐり、評価と見直しを検討

 2002年8月9〜10日の2日間、結核研究所において、全国の保健所及び医療機関で先進的な結核対策に取り組んでいる保健医療従事者が参加して、日本の結核の現状の評価と結核対策の今後のあり方に関する検討会が行われた。本稿では、検討された主要な課題と得られた成果について報告する。

結核研究所の支援のもと、見直しへの検討が進む

 本検討会には、保健医療機関と結核予防会より計35名(保健所等の公衆衛生行政機関より21名、医療機関より8名、結核予防会支部より4名、教育機関より2名)と結核研究所より15名が参加した。将来の結核対策の大幅な見直しに向けての検討は、結核研究所の積極的な支援体制のもとに進められており、本検討会後の学校健診や結核の標準治療の見直しなどに、その成果を見ることができる。
 なお、本検討会は平成14年度厚生科学研究の再興感染症研究事業「再興感染症としての結核対策確立に関する研究」(主任研究者:森 亨)の一環として開催された。

患者の発見方策について

 日本における患者発見は、その多くは医療機関受診を発見動機にしているが、新登録結核患者数及び罹患率は、ここ2年ほど減少しており、医療機関における結核への注意の低下により、発見の時期がより遅くなっている可能性がある。
 本検討会では、結核を疑うべき症状を有して医療機関を受診する者に対し、適切な検査と診断が行われることの重要性が強調され、医療従事者教育における結核の位置付けと、医療従事者に対する啓発及び喀痰検査の普及の必要性がなどが論じられた。
 健診による患者発見については、青・中年層は、高齢者層に比して、発見割合が少なくないことが示された。また、住所不定者や飯場の労働者、在日外国人など、定期健診や有症状時の医療機関受診が行き届いていない集団の存在が課題として挙げられた。この点については、患者発見の強化を行う対象を、ハイリスク層とデインジャー層の2つに大別して、患者発見方策の検討が進められた。
 健診方法については、高齢者(特に寝たきり者や脊柱の変形が強い者)など、胸部X線診断が困難な者への対応方法について、検査方法が検討された。なお、小・中学校の定期健診において、ツベルクリン反応検査が廃止された場合の対応についても検討がなされ、2002年12月26日に文部科学省より示された「定期健康診断における結核健診マニュアル」にその成果が反映されている。

予防接種、化学予防について

 小児結核の蔓延状況のめざましい改善と予防接種に関する新しい知見を踏まえて、まず見直し提言及びその後の厚生科学審議会の検討結果について討議された。生後早期の予防接種を推進するため、乳児についてはツ反検査を省略することが提言されているが、安全に直接接種が行われるための方策が、重要課題として挙げられた。また、小・中学校におけるBCG再接種廃止の議論を受けて、初回BCG接種の接種技術の確保の方法が検討された。
 科学予防については、事業所や高齢者施設における集団感染の発生を踏まえて、予防内服の適応基準(年齢制限や基礎疾患)について検討するとともに、予防内服の治療方法(治療薬剤や治療期間の選択)及びその普及方法についても論じられた。

医療、人権の尊重について

 日本の結核の治療状況については、治療成功率が低下傾向を示している点や薬剤耐性の頻度が増加のきざしを示していることが課題として挙げられている。検討事項として、適切な治療方法の周知・徹底が指摘され、標準化学療法の見直しなどにその結果が生かされている。
 確実な服薬の確認方法の開発と導入の必要性については、日本版DOTS戦略の導入の重要性が議論された。さらに、適切な診療の供給を支えるために必要となる、入院治療の確保と結核病床の機能分化の推進や、非結核性抗酸菌症及び多剤耐性結核症の治療における保険制度上の課題について検討された。また、結核対策と人権の関わりについては、感染症法との整合性も考慮しつつ、人権を制限する措置の必要性とその審議機関の設置について討議された。

サーベイランス、国・地方自治体の責務

 結核患者登録制度は、多くの国で、その地域の結核蔓延状況の把握に欠かせない情報源であるとともに、治療成績を評価するためのコホート分析の基礎資料としてDOTS戦略に不可欠な要素として活用されている。
 日本におけるサーベイランス(発生動向調査)は、罹患率などの重要な疫学的指標の情報の入手に加えて、コホート分析も可能になりつつあり、新しい結核対策におけるサーベイランスの法制度上の位置付けを整備することの必要性が検討された。また、国及び都道府県等の地方自治体の責務、保健所の果たすべき役割などについて議論がなされた。

(対策支援部企画科長 星野斉之)






日・韓・中結核研究所学術会議
各国の最新の結核研究・対策の概要が明らかに
2002年9月12日〜14日、御殿場市・経団連会館

 第3回日・韓・中結核研究所学術会議が森結核研究所長を議長とし、22名が参加して、御殿場の経団連会館にて開催された。会議の発表テーマは技術支援、疫学研究、基礎研究、臨床研究の4つのセッションに分けられ、討議は参加者全体で行う形式がとられた。

セッション1
研修と技術支援

 韓国と中国における結核研修について報告された。日本側の対策支援部からは、企画科の中西氏、星野企画科長、小林保健看護科長がそれぞれの担当分野の対策支援部活動について発表した。討論では、特に日本の保健師活動について興味が示された。

セッション2
疫学とサーベイランス

 中国からは、結核対策は依然として遅れていて、疫学状況改善鈍化が問題であると報告された。韓国からは、2000年1月からインターネットウェブサイトを利用して新しく導入された「韓国の結核サーベイランス方式」について報告があった。

セッション3
基礎研究

 ツベルクリン反応測定国際有資格者でもある韓国のChan氏は、硬結の測定訓練の必要性について解説した。
 中国からは、抗結核薬耐性が明らかに高率で、各県により大きな差が見られることが報告された。さらにこの原因として、各県により貧富の差があること、抗結核薬が薬局で購入できること、喀痰塗抹陽性者の治療薬は無料で陰性者は有料であることなどの問題点が挙げられた。
 菅原基礎研究部分子病理学科長は、結核感染におけるサイトカイン、転写因子の役割を動物モデルを利用して解説し、結核菌感染に最も影響を及ぼすのはINF-gamma、TNF-alphaであり、これらの詳細な感染機序の解明が新しい治療・診断に結びつくであろうと示唆した。

セッション4
臨床研究

 原田基礎研究部免疫学科長は、結核菌の特異抗原測定キットQuantiFERON-TBキットを使用し、ヒトの血液から結核感染が推定可能であることを臨床データで示した。中国の内科側から結核患者の治療、外科側からは172例に行った肺結核・気管支結核手術例の概要の紹介があった。中国の結核研究所は胸部腫瘍研究所も兼ねており、肺がんに関する3題の報告があった。

各国の結核研究・対策を把握

 今回の会議では、研修、疫学、臨床、基礎と幅広い分野からの発表があり、それらに対する質疑応答を通じて、各国の研究所においてどのような最新の研究あるいは結核対策活動がなされているのか、その概要を知るよい機会となり、有意義であった。

(対策支援部副部長 宍戸真司)






第61回日本公衆衛生学会総会自由集会
事例を通して結核集団発生対策を活発に検討
2002年10月23日、さいたま市・大宮ソニックシティ

 今回のテーマ「結核集団発生の対策に関する自由集会には、仕事を終え新幹線などで駆けつけた方々を含め141名が参加。結核研究所の森亨所長の講演「結核対策の見直しの焦点」の後、3つの事例報告が行われ、それに対して専門家から有意義な助言をいただいたので、その内容を紹介する。

事例1 施設の集団発生

 助言者:愛知県新城保健所  犬塚君雄氏
 施設における結核集団感染対策に保健所は積極的に関与し、最初から施設と一緒に考えていく姿勢が大切。事業者や施設の長は、健康診断の結果を保健所に報告する義務があり、報告のない施設に対し、保健所は結果をもらう努力をすること。福祉施設へは常日頃から感染予防等の情報提供を行うなど関係を密にするとともに、指導等を行う場合は福祉担当者と連携した対応が必要。

事例2 医療従事者の発病

 助言者:山形県村山保健所  阿彦忠之氏
 3つの問題提起をしたい。^綮媼身の発病、診断の遅れから集団感染対策を発動している例が全国的に急増しており、注意喚起が必要。公的責任の強化と自覚について、医師自身だけでなく、医師会及び健診や予防接種で医師派遣を依頼する行政側の責任も考慮した対応が求められる。保健所の医療機関への立ち入り検査で医師の健診受診率が低い場合、文書指導を行う。また、採痰場所や気管支鏡検査室の換気など、環境面を含めてチェックポイントを決める。接触者健診で患者が発見された場合、その年齢等から判断して最近の感染による可能性が低くても、菌陽性なら必ずRFLP検査を実施し、関連の有無を確認することが大切。

事例3 集団感染事例を通して考える「患者の人権」と「保健所の役割」

 助言者:高知市保健所  豊田誠氏
 集団感染対応の目的は2つある。〃覲砲量延防止、⊇虍患者と接触者の心のケア。,鉢△篭δ未垢襪海箸發△襪、違ってくることもある。しかし、長い目で見たときには、必ずこれらは押さえておかなければならないことと思う。

事例1及び3に対して

 助言者:大阪府立羽曳野病院  高松勇氏
 臨床の立場からの助言として、後で定期外健診をする大変さを考えると、医療従事者の定期健診・チェックは大切。パニックが起こりやすい地域での説明会の場合は大変だと思うが、きちんと説得しなければならない。

 最後に結核研究所対策支援部の山下武子部長がまとめを行い、「結核自由集会は不滅です」と宣言した。次回は京都で開催する。

                           

(対策支援部保健看護学科科長代理 永田容子)






        

Information

◎研修日程(於:結核研究所)

医学科 医師短期研修(定員30名)
新医師臨床コース(定員20名)
胸部X線読影研修(定員30名)
 6月18日〜27日
10月16日〜18日
11月11日〜14日
放射線学科 夏期研修(定員60名)
短期8日間コース(定員30名)
結核対策と医療監視(定員50名)
 8月27日〜29日
11月 5日〜14日
12月 9日〜12日
保健看護学科 夏期研修(定員150名)
対策8日間コース(定員60名)
基礎4日間コース(定員60名)
7月30日〜8月1日
5月28日〜6月6日、7月9日〜18日
9月16日〜19日、10月28日〜31日、11月18日〜21日
*上記以外にもまだ研修がございます。 詳細は研修案内へ。  
       

◎結核予防技術者地区別講習会 (詳細へリンク)

山口県:6月5日、6日 / 奈良県:6月12日、13日
北海道:9月開催予定 / 富山県:6月26日、27日
秋田県:7月3日、4日 / 沖縄県:7月8日、9日
神奈川県:7月24日、25日


Updated 03/04/18