羽曳野病院における院内DOTSの取り組み

大阪府立羽曳野病院 看護婦長 久米田鶴子 



はじめに

 結核は,短期化学療法の普及により長期入院から短期入院へと変わり,治療の主体は通院治療となってきている。その結果,服薬の自己管理が重要となり,退院後の服薬継続が結核治療の最大のポイントである。
 当院では,従来から外来患者の治療中断防止を目的に結核患者看護連絡票や受診調査票などを作成し,予約日に受診しなかった患者に対して,外来より電話及び保健婦に患者訪問を依頼するなど,受診勧奨を行ってきた。しかし,当院を退院後,転院した患者の治療状況を看護部が調査したところ,転院患者は中断・脱落が極めて多く,服薬支援の希薄な環境での治療成功率は低いことが判明した。
 そこで,2000年10月より大阪市の保健所と看護連携会議を開催し,2001年1月より院内DOTS(対面服薬確認)を始めた。その取り組みについて述べる。

院内DOTSから院外DOTSに向けて

 当院には結核病棟が5病棟ある。その全病棟において,当院で作成した「院内DOTSマニュアル」(2001年1月4日発行)に基づいた院内DOTSを開始した。抗結核薬の服薬開始と同時に,入院患者全員を対象に「患者教育」及び「院内DOTS」を行っている。そして「院内DOTS」から大阪市の「ふれあいDOTS」等へと引き継ぐために,定期的に「院内DOTSカンファレンス」を開き,退院可能となった喀痰塗抹陽性患者並びに治療の中断,脱落のリスクが高いと判断された患者の情報提供及び服薬継続の課題について検討を行っている。

1,患者入院時に受け持ち看護婦が院内DOTSについて説明し,「服薬手帳」を配布する。服薬手帳には治療薬剤,結核菌検査成績,メッセージなどを記載する。
2,受け持ち看護婦は各患者に結核のしおり「結核を早く治そう」を配布し,この内容に基づいて「患者教育」を行う。
3,病棟婦長は「院内DOTS」開始と同時にコンピュータによるDOTS開始入力を行う。
・抗結核薬服用は1日1回朝食後を原則とし,看護婦は個別にDOTSを行い服薬手帳に服薬確認のサインをする。
・受け持ち看護婦がアドヒアランス良好と判断したときは主治医と相談の上「服薬の自己管理」へ移行する。
・定期的に残薬及び空薬チェックを行い自己管理に問題がないことを確認する。「服薬の自己管理」ができないときや副作用などで減感作を必要としたときはDOTSに戻る。
4,退院可能となった患者については「DOTS個人カード」を作成する。
・患者番号をコンピュータ端末に入力し,DOTS開始入力時からの既存データの入った個人カードを出力する。
・主治医は治療薬剤の使用状況,副作用の有無,治療終了予定日を追記する。
・受け持ち看護婦は服薬に関する入院中の問題,退院後のリスクや課題を追記する
・婦長は,自己退院など入院継続が困難な患者に対しては,保健所と早期に連絡を取り治療中断することのないよう配慮する

図1 院内DOTSの流れ
院内DOTSの流れ

院内DOTSカンファレンスの開催

 院内DOTSカンファレンスは隔週の金曜日に開催する。主治医及び結核診療医師,結核病棟婦長,ケースワーカー,薬剤師,保健所医師,保健婦などが出席し,「DOTS個人カード」を基に,服薬継続を阻害する要因について検
討を行い,退院後の服薬支援方法を決める。

DOTSカンファレンス成功のキーワード
1,出席者全員が結核を減らそうという共通の認識で参加している
2,保健婦と顔なじみになることで,日ごろの情報交換がしやすい
3,情報交換がリアルタイムにできる

 この様にDOTSカンファレンスは,保健所と病院が1人でも多くの患者を治療成功へ導くために何をすればいいのか真剣に考える場となっており,連携の強化面においても重要な役割を果たしている。


Updated02/03/01