世界結核DAY フィリピンより報告

3月24日の「世界結核デー」に合わせて、世界各地で様々なイベントが開催されますが、フィリピンでは2008年3月28日にマニラ首都圏マリキナ市にあるスポーツスタジアムを借り切ってイベントが行われました。

WHO(世界保健機構)、フィリピン保健省などが主催で開かれたこのイベントは、行政の結核対策担当者を始め、地元NGOや国際NGO、バランガイ・ヘルス・ワーカー(BHW: Barangay Health Worker)と呼ばれる保健ボランティアまで、幅広く結核対策に関わる約1000人もの人々が参加して行なわれました。会場の中央に設置された特設ステージでは司会者がスローガンを掲げ、各機関の代表による壇上での挨拶があり、テレビや雑誌の取材陣も大勢見られました。フィリピンはWHOが定めている22の結核高蔓延国の1つで、その順位は例年7位から9位となっています。フィリピン国内の死亡原因の第6位が結核であり、全体の死亡者の約7%が結核によるものある為、結核に対する国民の関心や、メディアの注目度が高いのもうなずけます。

2008年のテーマは「I’m stopping TB」ですが、フィリピンではサブタイトルとしてタガログ語で「Stop TB! Kaya mo, Kaya Ko」というテーマもあり、これは「結核をなくそう!それはあなたにも私にも出来る。」という意味を表しています。

RIT/JATA Philippinesの現地理事の1人でもあるWHO Stop TB Philippines のMedical Officer、Dr Voniatisもステージ上で挨拶をし、「フィリピンにおける結核対策には、政府などの公的機関とNGOや住民組織といった民間団体との協力が不可欠である」と訴えました。また、フィリピン保健省からは「Public-Private Mix DOTS」(PPMD)を結核対策戦略の一つとして採用しており、都市貧困地区と呼ばれるスラムエリアにおける結核対策の行政介入には限界があると認識した上で、その土地の特徴を熟知しているNGOスタッフや住民組織の存在が不可欠として、行政と民間組織とが一丸となって結核対策を行なって行く必要があるとのスピーチがありました。更に「国内だけではなく国際的な協力も不可欠である」とし、その中の協力団体の一つとして日本結核予防会の名前も挙げられました。

マニラ首都圏には多くの都市貧困地域があり、この中には東洋最大のスラムと言われるマニラ市トンド地区や、ケソン市パヤタス地区などがあります。それらの地域は住民の流出入が激しいことや、治安上の問題から行政の医療サービスが届きにくい場所です。住民の多くは『結核は怖い病気』と認識しつつも、治療費に関する心配や、、不法占拠地域に住んでいるために「行政」が行なう医療サービスに漠然とした不安を抱えているために受診が遅れ、症状が進行し手遅れになるケースが多く見られます。このような地区では、地域に根ざした保健ボランティアが中心となり、結核患者の発見や、患者さんに正しい結核の知識を普及するのに重要な役割を果します。
結核対策従事者は、日常の地味な業務の場において、自らが国全体における結核対策の枠組みの中でどのような役割を担っているのか意識する機会はあまり多くありません。そのような中で、結核対策に従事するもの達がこのようなイベントに参加することにより、自分達が結核対策の中で非常に重要な役割を担っていると認識することで、それぞれの士気を高め、一丸となって結核対策に取り組んでいけることとなると考えられます。



04/2008


Updated 03/03/10