結核の常識'99結核緊急事態宣言ただいま発令中

結核の常識'99

 

 

結核緊急事態宣言結核菌

結核患者数が38年ぶりに増加した
新しく結核と診断されて登録された患者が増加しました。
1.見つかったときには、もう排菌しているほど重症の患者が増えたこと
2.20代、30代(青壮年)の人で、塗抹陽性で見つかる人が多くなったこと
3.70歳以上が全体の1/3以上を占め、増加率も一番大きいこと

集団感染も続出している学校・病院
学校はもちろん事業所でも集団感染が多発しています
病院や福祉施設といった、医療関係の施設でも発生。医師も結核とは疑わなかったらしいのです。        

アメリカでもわが国と同じことがありました
原因は、70年代初期に結核問題は終わったと予算を削り、対策も手抜きをしたことです。
1985年以降、10年間で16%も患者発生数が増加しました。ホームレス、麻薬中毒、エイズ患者、移民等の増加という要因もありました。さらに不完全な治療で多剤耐性結核が発生しました。

ニューヨーク市ではみごとに改善されました疾病予防センター
93年から罹患率が再び減少。多剤耐性結核も激減し、院内感染もこの2年間報告されていません。
ニューヨークではアメリカ全土に先駆けて79年ころから増えはじめ、解決に向けた努力もないまま86年以降患者が急増しました。あわてた国の疾病予防センターの主導で年間60億円の予算スタッフ増員で対応した。

わが国で結核患者が増加した特別な事情
既感染高齢者からの発病が最大の問題です。
国民の結核への関心がうすれたことも影響しています。医学部なのに、結核の講義をしないところがあるほどです。
経験豊かな結核専門医師が高齢となり、後継者も少ないため。
東京、大阪等の大都会の一部に多発する結核患者の問題。

 

 結核の常識'99 あれこれ

結核のABC
結核と日本人
結核に関係することば

 

 

結核のABC

結核菌結核菌が吸い込まれると
菌が肺の中で増殖しだすと身体の免疫機能が活動を始め(このときツベルクリン反応検査をすると発赤する=感染)、多くの場合、結核菌を封じ込めてしまいます(こうなった人を「既感染者」という)。
しかし封じ込められた菌は姿を変え、肺の中で眠ってその人と一生をともにします。これを免疫機能が油断なく監視し続け、外部から入った結核菌もすぐ撃退してくれます。
一方、なんらかの事情で免疫機能が弱まっている人は、発病してしまいます。

結核菌発病しても
最初のうちはかぜと同じ症状です。ただいつまでも、咳や痰が止まらず、微熱が続きます。
本人もかぜと思っていますし、医師も結核が頭に浮かびません。
そのうちに、だるさ、寝汗、胸の痛み、さらにひどくなると喀血などがあります。

結核菌発病する人、しない人
体質も関係します。その時の身体の状態、栄養の状況ももちろん関係します。徹夜が続く、やせるために食べない、即席食品ばかりの偏った食生活。これらは大変危険です。

結核菌うつす人、うつされる人
症状が進むと排菌するようになる。塗抹陽性の結核と診断されたら、すぐに周囲の人や接触のあった人のX線撮影やツベルクリン反応(定期外検診)をする必要があります。

結核菌 いちど免疫をもった人(既感染者)は生涯安全なのか
監視機能(免疫)も、年をとったり糖尿病、透析、大手術等々でくたびれてくると、眠っていた結核菌が好機到来と活動を始めます(これが「再燃」)。高齢者の結核のほとんどがこれによります。
老人養護施設で集団感染が相次いでいます。既感染者は外からの結核菌には強いはずでしたが、免疫力が落ちれば進入した菌にも弱くなるのが(再感染)、それとも封じ込まれていた結核菌が死んでしまい、監視機能も既に無効になっていたのか、ほんとうのところは医学的にもわかっていないのです。

 

 

結核と日本人

乳児
全く無防備の状態にある。結核菌におそわれたら一気に重症化し、髄膜炎や粟粒結核になる。
でもBCGを接種していれば、重症化は防げる。死亡例は未接種の場合がほどんど。赤ちゃんのうちに必ず接種を。

小学校児童
小学校児童BCGの効果は、小学生時代は持続しているようなので、小1のBCG接種は見直されることに。

思春期
特に結核菌に好かれる年代、発病したら進行が早い。特に、女子が弱い。
思春期高1の学校検診では、胸部X線検査がまだまだやめられない。

青年期
思春期に続いて結核菌に好まれる年ごろだが、女子と男子が逆転する。
青年期活動的な年代だから、排菌している患者が一人出ると、方々で感染者を出す。若さにまかせて無理、粗食・偏食。自由業の人は定期検診を受けず、発見が遅れることが多い。

壮年期
社会の中堅だが、本物の結核菌に感染していないから強い免疫力がないのは若い世代と同じこと。
壮年期比較的安定した時代だが、生活習慣病も出てくる。

高齢者
年をとれば、それだけでも免疫力が落ちるうえ、生活習慣病も加わる、危険な年ごろだ。
高齢者わが国は昔の大まん延の後遺症で、この世代の多くが既感染。結核再燃で新登録患者の半数以上を占めている。今後もますます高齢化が進み、再感染の問題もとりざたされている。


 

結核に関係することば  

高危険集団 ハイリスク・グループ
結核発病の危険性をもった人たち
高齢者:年をとればただでさえ免疫力が低下する。わが国では既感染の人が多い。
糖尿病の人、透析をしている人、ステロイド剤をのんでいる人、HIV感染者:みんな免疫力が落ちている
ディンジャー・グループ
学校の教職員、医師、保健関係者、接客業の人など。結核になると多くの人にうつす危険性のある人たちのこと。発病の危険性が高いわけではありません。
多剤耐性結核 抗結核薬は11種ありますが、代表的なリファンピシン(RFP)、イソニコチン酸ヒドラジド(INH)の双方が同時に効かなくなれば、これだけで多剤耐性結核といいます。服薬を中途で止めると、耐性菌をつくりやすいので、これを防止するために、医療従事者の見ている前で、確実に服薬させることがWHOで奨励されています。
住所不定者の多いニューヨークではこの方法で成功しました。
日本ではこの患者は1500〜2000人ほどいて、さらに新たに年間80人程度が発病しています。
結核の治療 リファンピシンとヒドラジドを中心とし、ほかにいくつかの抗結核薬を合わせた化学療法が行われますが、昔と異なり大体6カ月から9カ月で終わります。これを短期化学療法と呼びます。わが国では昔の名残か長期療養させる医療機関が多かったのですが、ようやく短期療法が徹底してきました。
予防内服 結核とわかったら、心配しながら手をこまねいているより、抗結核薬をのませて発病を阻止したほうがいいのです。わが国では昭和32年から乳幼児を対象にして制度化してきましたが、昭和50年には中学生まで、平成元年には29歳までと、順次拡大して、その有効性は既に立証されています。
 

 

1998年の結核
新登録患者数・41,033人
(非定型含む旧分類 44,016人) 【42,715】
罹患率32.4
(旧分類 34.8) 【33.9】
(人口10万人あたりの新登録患者の率)
喀痰塗抹陽性肺結核罹患率10.6 【'97 塗抹陽性肺結核罹患率 12.7】
(痰の中に菌を多量に出している、感染性の高い新登録患者の率で人口10万人あたりの率)
要治療患者・49,205
(非定型含む旧分類 53,741) 【55,409】
有病率38.9
(旧分類 42.5) 【43.9】
(人口10万人あたりの要治療患者の率)
死亡者数・2,795 【2,736】
死亡率2.2 【2.2】
(人口10万人あたりの死亡者の率)

   【 】は前年(1997年)の数字

 

結核のQ&A 結核の基礎知識
結核についてのなぜ?を家庭での知識として
ご活用いただけるよう分かりやすく解説しました。
 

 

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Updated 03/06/20