第3回環太平洋新興感染症国際会議

H10年3月28〜30日/バリ島(インドネシア)

結核予防会会長 島尾忠男

 日米医学協力計画は1965年にアジアに多い疾患を対象にして日米両国が共同して研究に当たろうと いうことで始まり、30年を越える協力の長い歴史がある。当初は結核、らい、ウイルス、寄生虫、 コレラの5専門部会であった。しかしその後栄養異常(現在では栄養・代謝)、肝炎、 環境突然変異がん原、エイズ、免疫が加わり、結核とらいが統合されて結核・ハンセン病部会となり、 最も新しく急性呼吸器感染症部会が 加わって、10の分野で日米が共同で研究を進め、コレラに対する経口補液療法、B型肝炎ワクチンの 開発、各種感染症に対する分子生物学、遺伝子工学レベルの研究の推進など、大きな業績を上げてきた。
 一昨年の日米両国首脳の協議で、「新興・再興感染症」が包括協議の課題となり、研究面では日米 医学協力研究会が担当することとなった。
 最初の試みとして、96年7月に京都で新興感染症に対する第一回の国際会議を開催し、 アジアからの研究者も含めて、エボラ出血熱、大腸菌O−157感染のような新興感染症から、 結核やマラリアのような再興 感染症までを取り上げ、全般的に現状を分析した。97年3月にはバンコクで第2回会議を開催し、 地元のタイをはじめ環太平洋諸国の行政官、研究者を招き、デングとデング出血熱、大腸菌O−157 感染、薬剤耐性菌の3課題を取り上げて、現状と今後の動向について検討した。諸外国研究者の 招聘には、外務省が尽力してくれた。
 厚生省もこの課題に関心を示し、戦略的重点研究・国際支援事業として予算を計上することができ、 第3回の会議を平成10年3月末にインドネシアのバリ島で開催した。参加は日本から56名、米国19名、 地元インドネシアから73名、それ以外の環太平洋諸国から59名、計207名であり、 今回の課題は結核、マラリア、肝炎、感染と発がんの4課題であった。第1日は全体討議で、 気候が感染症に及ぼす影響、選ばれた4課題の現状と問題点についての総説が行われ、第2日は 4グループに分かれて、今後の研究の進め方についての討議を行い、第3日は各グループの結論の 報告を受け、討論した後「医学の足跡と倫理」についての講演を聞いて、会議を終了した。  日米医学協力計画はアジアに疾病を対象としながら、従来アジアの研究者の関与が少なかったのが 大きな問題点であったが、今回外務省、厚生省の配慮により、このように多くのアジア諸国の行政官や 研究者と交流できたことは、日米医学の長い歴史の中で初めてのことであり、出席者からも大変有意義 であったとの声が多く寄せられた。
 明年の会議は現在計画中であるが、恐らく2月中旬から下旬にマニラで、 大きな話題となりつつあるインフルエンザ、寄生虫性疾患、それに第2回で取り上げた課題であるが、 その後エル・ニーニョ現象の影響でアジア各地で増加しつつあるデングとデング出血熱を、 フォローアップの意味で取り上げる予定である。日米医学の合同小委員会も、従来は1月か2月に ハワイ島で行われてきたが、時期が近接するので、明年からは本会議と前後して開催することに 変更される予定である。ちなみに筆者は平成5年以降日米合同委員会の日本側の委員長を担当し、 事務局は平成10年4月から予防会本部、結核・ハンセン病部会の事務局は結核研究所に置かれている。


Updated 98/09/09