世界結核デー・アドボカシーワークショップ

 

 世界結核デーの活動をより効果的にするための経験交流、相互学習を目的として、世界結核デー・アドボカシーワークショップが、1997年9月28日から30日まで、ちょうど国際結核肺疾患予防連合年次総会(パリ)の前の週に、総会への出席者が立ち寄れるようにとオランダ結核予防会事務所で開かれた。肝煎りはオランダ結核予防会(KNCV)、WHO世界結核対策本部。今年で第3回だが、古知WHO世界結核対策本部長からアドボカシー活動の重要性を教えられたKNCV理事長のブルックマン博士が始めた由。

 主催者はKNCV広報担当4人、WHO(まとめ役格のクラウト氏ほか3人)、IUATLD1人、のほか約30人。目立ったのは米国で、CDC(疾病対策センター)から2人、政府国際協力関連機関、NGOから各1人の出席があった。他にドイツ救らい協会、ノルウェイ、デンマーク、南アフリカ、イタリア、エストニア、スペイン、それにダミアン、アムネスティ・インターナショナルなどいくつかの国際非政府組織、製薬会社など。アジアからは筆者1人とは寂しい限りである(厳密にはネパール代表として英国人顧問が来ていた)。

 ワークショップの最初の2日は主としてレクチャーと質疑にあてられ、世界結核デーをはじめとした、結核対策のためのアドボカシーあるいはパブリシティ支援を強化するための考え方、基本的ノウハウの勉強会を行った。それに基づいて第3日目に98年の世界結核デー企画のためのブレーンストームを行う、という手順でプログラムが進められた。参加者の姿勢は、日本のように診療活動などの収入部門を持たず、慈善募金だけを収入源としている団体ならではの真剣かつ深刻なものであるが、同時に単に募金だけでなく、それと共に広報・啓発活動が車の両輪になっている、という基本的な認識からも熱が入るのであろうと思われた。アドボカシーに関する日欧の世論の受け入れに違いがあることを考慮しても、わが結核予防会にとってもこの種の「技術」を学ぶことには意味があるように思う。とくに活動の評価などの重要性は観念的には分かっていても、それが結果的にマスコミに何回、どのくらい扱われたかを「メディア・カバレッジ」などと称して評価する方法論は新鮮だった。以下主なレクチャーの題を列挙してみる。

1.     なぜ世界結核デーか?

2.     1997年世界結核デーへの各国の取り組みと評価

3.    1998年の展望(全員討論)

4.     さまざまな結核問題(結核と女性、結核と難民、結核と開発)

5.    DOTS戦略(シンポジウム−中国とチリ、南アフリカ、ネパール)

6.    募金活動(シンポジウム−オランダKNCV(王立オランダ結核対策同盟は、このいかめしい名称とは別にもっと軽く響く「オランダ結核基金」(NTF)を設立した)、ドイツ救らい協会、米国CDC(募金よりは結核関連団体の連帯)

7.    アドボカシーと広報の戦略−沈黙は最大の敵−(シンポジウム−アムネスティのPR活動−正当なノイズを作る−ほか)

 3日目のブレーンストーミングで出された世界結核デーの広報事業のアイデアをいくつか。●スポーツ大会を開催、スタジアムで5万人が一斉に咳をする●広場で10秒ごとに1人が倒れる(結核死の発生を示す)●エイズの赤いリボンのようなシンボルを作る(赤いハンカチなど)●DOTSを採用せず薬剤耐性結核を作る医師を裁判にかける●結核にたおれた詩人、作家、作曲家などの特集号を編集、音楽会も開催●結核菌の顕微鏡像をあしらったネクタイを作る●スピルバーグの新作映画「Thoracic(胸部の) Park」の広告を。

(結核研究所:森   亨)


Updated 98/03/06