BCG接種の確実・安全な実施を
− CD教材「BCG接種〜正しい接種技術と評価の方法〜」発行に際して −


BCG接種−正しい接種技術と評価の方法− 2003年11月,予防接種リサーチセンターから「予防接種ガイドライン」と「予防接種と子どもの健康」(予防接種ガイドライン等検討委員会編,厚生労働省健康局結核感染症課監修)の改訂版が出された。「ガイドライン」は接種にあたる医師,医療従事者,市町村担当者等向け,「子どもの健康」は保護者向けに病気とそれらの予防接種の意義と問題を解説したものとして,共に1994年に刊行されたものである。その後各種予防接種に関する考え方や対応の進歩を反映させるため,「ガイドライン」は1996年,1998年の改編に続く,5年ぶりの改編として行われた(後者は1995年以来)。BCG接種やツベルクリン反応検査についても,小中学校での接種の廃止後の制度に関して,旧版に比して決して大幅ではないが,多少の改変を行っている。特に「ガイドライン」では副反応に関して解説をやや詳しくしてある。

 この改訂と平行して,安全な接種の確保に向けて,「予防接種間違い防止の手引き」が作成され,関係方面に周知された(同じく,予防接種ガイドライン等検討委員会編,予防接種リサーチセンター刊)。これはいわゆる「ヒヤリハット」事例に基づいた事故の予防と対応を要約したものである。BCG接種については深刻な副反応自体が少ないことは幸いなことであるが,安全問題に関しては他の予防接種と変わらないか,これまでのところはツベルクリン反応検査を伴っていた分だけ,トラブルも多いという面すらあった。今後は,BCG接種やツベルクリン反応検査の機会が減り,取り扱いに慣れていない人がたまに従事するケースが増え,また個別接種が増えるにつれて,トラブルもむしろ増加することが懸念される。結核研究所対策支援部に寄せられた相談や情報から見ても,この2,3年以内で「ツベルクリン反応検査のつもりでBCGワクチンを皮内注射した」事例が少なくとも3件あった。同様に,「BCG接種を肩に接種し,被接種者の6割にケロイドが発生した」事例も報道された。「管針を2回押圧するところを1回しかしなかった」事例はいっこうに減らない。「使用済み管針をそのままさらに別の子に用いた」,「期限の切れたワクチンを接種した」という事例も時々起こった。「保護者から腕に接種しないで臀部にしてもらいたいと言われたが,どうしようか」,という相談も受けている。

 今後の適正・安全なBCG接種を確保するために,(財)結核予防会はCD教材「BCG接種−正しい接種技術と評価の方法−」(監修:結核研究所長 森 亨)を発行した。これは日本ビーシージー製造株式会社から市町村・予防接種従事医に配布される予定である。見やすい,しかもかなり具体的・詳細な接種技術や評価・指導のマニュアルであり,広く活用されることを望みたい。
 結核予防法の改定で直接接種法(ツベルクリン反応検査をせずにBCG接種を行う方式)が導入されれば,上記ガイドライン等も大幅な改訂が必要になるが,いずれにせよ適正,安全な接種がますます求められることに変わりはなく,そのための努力は市町村や保健所,医療機関がそれぞれの立場で続けなければならない。

文責 編集部


Updated04/04/16