分科会(結核とエイズ)の発表風景

第5回アジア太平洋
地域エイズ国際会議


結核研究所研修部

医学科 科長 星野斉之

 1999年10月23日から27日までマレ一シアのクアラルンプールで開かれた、第5回アジア太平洋地域エイズ国際会議に、結核研究所で行われている第6回アジア地域エイズ専門家研修の研修生12名と共に参加しました。今回のテーマは「The Next Millennium: Taking stock and going forward」でした。日本語に訳せば、「次の千年−エイズに関する知見や対策の現状を評価し、未来に向かって前進を」となるでしょうか。今回は、主催するマレーシアから干人以上、全体では三千人近い参加があり、数多くの分科会が同時進行しているにもかかわらず、どの会場も盛況に近い状況でした。

 会議は、最重要な話題を扱う毎朝の全体会、分野ごとに演題を集めた分科会、研修を目的とした技術向上ワークショップ、ポスター発表等からなりました。主要分科会の内容は、(1)基礎研究、(2)臨床研究、(3)疫学的研究、(4)社会学及び行動科学的研究の四つでした。日本からは、日本のHIV/AIDS流行状況、BCGを用いたエイズワクチンの開発、日本における外国人感染者の受療行動、タイ国北部におけるHIVと結核や院内感染、エイズ予防法制定へのNGOの貢献などの発表があり、活発に討議が行われていました。結核とHIVに関する演題を集めた分科会が二つありましたが、結核の臨床医による教育講演的な内容で、新しい知見に乏しく、結核対策プログラムとAIDS対策プログラムの連携に関する具体的な模索や提案はありませんでした。公衆衛生学や国家政策の視点から結核対策に携わっている団体の貢献の必要性を強く感じました。

 医学以外の分野では、性教育、宗教とエイズ、行動変容、移動労働者問題など、社会的な事象に焦点を当てた分科会も多く見られました。その中では、NGO団体によるHIV感染者支援やエイズ予防教育の活動報告に示唆に富むものが多く、変貌するコミュニティヘの対応方法の開発は、自由度の高い民間団体に期待できると感じました。

 途上国のエイズ対策の現状報告では、薬剤の価格が高いため、コンドームや安全な性行為の普及による感染予防、他の性感染症対策の強化、感染者及びその親族に対する支援などに制限されざるを得ず、薬剤価格に関して製薬会社の貢献の必要性が勧告されていました。

 日本では、最近同性及び異性間接触による感染例数の増加が認められており、性行為の低年齢化や若年者における性感染症の増加などの現状を考えると、エイズが蔓延する素地があり、結核と同様に今対策を見直さなければ将来に禍根を残す可能性があると思いました。

 次回は2年後の2001年に、オーストラリアにて開催されるそうです。今後のエイズに関する研究の進展とエイズ対策の前進を願ってやみません。最後に本学会参加を支援して下さり、多くの出会いと情報収集の機会を作って下さった日本エイズ予防財団に深謝いたします。




NGOや企業が参加したブース会場


 

Updated 00/03/09