新結核用語事典


免疫再構築症候群
[Immune Reconstitution Syndrome (IRS)] 

 HIV感染症において、強力な抗HIV治療(Highly Active Anti-retroviral Therapy: HAART)を開始すると、血中HIVウイルス量の減少とCD4数の上昇が認められ、免疫機能が回復してくる。この過程において、臨床症状が一過性に増悪する例が観察され、これが免疫再構築症候群(Immune Reconstitution Inflammatory Syndrome: IRIS)と呼ばれている。これは、すでに体内に存在している病原に対し、回復(再構築)された免疫機能が反応することで、炎症反応が増悪することの現れであると考えられている。特に、HAART前にCD4数が低値(<50 cells/µL)である症例が、HAARTによって短期間に急速にCD4数を回復させた場合に、それ以外の症例(CD4数>50 cells/µL)に比べて起こる頻度が高いとされ、結核(肺・肺外)、非定型抗酸菌症、ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス感染症、トキソプラズマ脳症、クリプトコッカス症、進行性多巣性白質脳症、帯状疱疹、単純ヘルペス、カポジ肉腫などの発症が報告されている。発症の時期にはばらつきがあり、HAART開始後数日から12週以降と広く分布はするが、なかでも治療開始後8週未満の報告が多い。重症の場合には、ステロイド療法の併用を行う例や、HAARTを一時中断する例もある。
 免疫再構築症候群の除外診断として、すでに診断されている日和見感染症の予測される臨床経過としての症状、HAART薬含む投与薬の副作用、などが重要である。
 免疫再構築症候群に関しては種々の報告があり、現時点で定義は統一されていない。英語表記に関しても、IRISに加え、Immune Reconstitution Syndrome(IRS),Immune Reconstitution Disease(IRD), Immune Restoration Disease(IRD), Paradoxical Reactionsらが同義で使用されている。

参考文献:
Shelburne SA 3rd, et al. Immune reconstitution inflammatory syndrome: emergence of a unique syndrome during highly active antiretroviral therapy. Medicine. 2002 May;81(3):

Shelburne SA, et al.Immune reconstitution inflammatory syndrome: more answers, more questions. J Antimicrob Chemother. 2006 Nov;58(5):1094-5.

Robertson J, et al. Immune reconstitution syndrome in HIV: validating a case definition and identifying clinical predictors in persons initiating antiretroviral therapy. Clin Infect Dis. 2006 Jun 1;42(11):1639-46.

Lawn SD , et al. Immune reconstitution disease associated with mycobacterial infections in HIV-infected individuals receiving antiretrovirals. Lancet Infect Dis. 2005 Jun;5(6):361-73.

French MA, et al. Immune restoration disease after antiretroviral therapy. AIDS. 2004 Aug 20;18(12):1615-27.


※この用語解説は結核研究所ホームページ委員会が編集したものであり、日本結核病学会用語委員会により作成されたものではありません。
 

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