"Every breath counts - Stop TB now!"

呼吸するたび唱えよう,「ストップ結核!」

2004年3月24日世界結核デー
ストップ結核パートナーシップ DOTS普及目標に向けてラストスパート

世界結核デーの標語決定

"Every breath counts - Stop TB now!"
呼吸するたび唱えよう,「ストップ結核!」

 すべての人が生きるために呼吸は必要であり,すなわちすべての行動には呼吸が必要です。また,結核の感染経路は空気感染であることから呼吸と結びつきがあります。鳥インフルエンザやSARSが最近アジア地域で問題になっていますが,感染症に国境はありません。世界の新しい結核患者の95%が発展途上国で発生する中,結核は途上国の人々だけではなく世界中のすべての人々に関わる問題なのです。DOTS戦略の普及が拡大しつつあるにもかかわらず,DOTS治療を受けているのは,世界の結核患者の37%のみに過ぎません。すべての患者に平等に治療の機会を提供するためには,政府の力だけではなく地域住民1人1人の結核に対する認識と協力が不可欠なのです。
 2000年の世界保健総会で掲げられた目標「2005年末までに世界の結核患者の70%をDOTSで治療しその85%を治癒する」を達成するために時間はわずかしか残されていません。しかし,目標をあきらめず最後までゴールを目指すようにとの意気込みが,この標語に表現されています。

2004〜2005ストップ結核キャンペーン
背景
 世界ではどれだけの人が,@世界の3分の1が結核に感染している,A妊産婦死亡率より結核で死亡する女性が多い,B結核は治る病気である,C結核撲滅のための世界結核対策運動が行われている,などの事実を知っているでしょうか。
 これまで結核根絶の旗印に対する一般大衆の意識や関与は十分ではありませんでした。その理由としては以下のようなことがあるでしょう。
・ 大衆の想像力に訴える強く刺激的な標語/着想/メッセージが無かった。過去2年間の標語("Stop TB, Fight Poverty","DOTS cured me, it will cure you too")はもともと結核関係者の世界に向けられたものであり,一般大衆にはとりわけ強力なものとは言えなかった。
・ 結核対策のための全世界的運動とマスコミのつながりは,全体的に見て国際的な読者層向けのものであった。このため,大衆の論争や地域レベルの結核問題と大衆のつながりはごく弱いものにしかならなかった。広域的/全国的なマスコミのネットワークを構築しつつ,地域的に適切な背景の中で大衆による論争を仕掛けることは,ますます優先されるようになっている。
・ たいていの国家結核対策プログラム(NTP)による報道キャンペーンは,広範で包括的,社会開発の問題というよりは,医学的規範(例. DOTS施行)を焦点としたものになりがちであった。このため概して患者にDOTSサービスを受けるよう促すことが中心になり,結核問題全体を擁護するようにはなりにくかった。
目標
 これらの背景から,大衆へのつながりを強化するために今年の標語が提案されました。現在の結核対策における優先事項を考慮したストップ結核キャンペーン(世界結核デー及び第2回ストップ結核パートナーズフォーラムのメッセージを含む)の目的は下記のとおりです。
・ 結核対策が緊急であることを示し,すべての関係者に2005年の目標を達成するよう促進する。
・ 結核対策運動に対してより大きな社会参加を促す。
 これらの目的を達成するための戦略は下記のとおりです。
・ 一般大衆の想像力をふくらませ関心を引くような,世界結核デーの標語の開発。
・ ジャーナリスト及びメディアとのパートナーシップの構築を促進することを重点としたマスメディア関連活動。
・ 結核に関する問題や,結核対策のための全世界的運動を示すための,ストップ結核パートナーシップの中心的人々を巻き込んだ1年間にわたるアドボカシー関連行事。
・ 世界結核デーと同日にニューデリーで行われるパートナーズフォーラムを通じての政治的関与の強化。

第2回ストップ結核パートナーズフォーラム・世界結核デーに開催
 2004年3月24日,世界結核デーにインド・ニューデリーにおいて開催される第2回ストップ結核パートナーズフォーラムは,2001年10月に米国・ワシントンの世界銀行本部ビルで開催された第1回フォーラムに続くもので(複十字誌No.283/2002年1月号参照),300ものパートナーが一丸となり,世界保健総会で掲げられた2005年の目標達成のために現在の進捗状況と課題を議論し,政治的関与を喚起することを目的としています。
パートナーシップ設立以来の成果
 ストップ結核パートナーシップは1998年に設立されてから世界の約300のパートナーを調整し,モデルを作成してきました。1993年以来約1千万人もの結核患者が治癒し,155カ国がDOTS戦略を施行しています。さらに150カ国以上が2005年の目標を達成するために国家計画を作成し実行しています。結核HIV重感染や多剤耐性結核対策への戦略も生み出されています。また,「グリーンライトコミティ(GLC)」 や「世界抗結核薬基金(GDF)」を通じ,良質で低価格の抗結核薬がDOTS患者に配布されるようになりました。新たな診断法,抗結核薬,予防接種の開発にも取り組んでいます。
日本の取り組み  結核研究所も本パートナーシップの一員として,フィリピン,ネパール,カンボジア,イエメン,ミャンマーなどでJICA結核対策プロジェクトに対する技術的支援,40年以上にわたる国際研修を通じての人づくり,結核予防会独自のプロジェクト及び各種研究などを通じて,結核制圧世界目標に向けて貢献してきました。さらに,世界の結核対策に対する方針の作成に寄与してきました。
 一方,わが国は2000年の沖縄G8サミットで結核・エイズ・マラリア(寄生虫)などに対し5年間で30億ドルの拠出を表明し,「2010年までに結核の患者数や死亡者数を半減する」という目標に向けて感染症対策に取り組んできています。そして,アジア,アフリカ等における三代感染症の予防,治療,ケアなどのための優良な対策支援事業に対し無償資金を供与するための新たな資金援助機関として,2002年にジュネーヴに設置された「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)」に対し,わが国は早急に追加拠出をすることとし,2004年に1億ドルまでの拠出を行うことを表明しました。この拠出により日本は2002年から総額2億6,500万ドルの拠出を行うことになります。
世界の状況
 このような資源の投入及び支援にもかかわらず,世界では毎年800万人以上が結核を発病し,200万人が結核で命を落としています。貧困や社会的情勢で世界の結核の状況は悪化し続けており,今まで以上に結核により死亡する人が増えています。
 一方,世界的なHIV/エイズの流行により,2003年には300万人以上が死亡し,500万人が新たにHIVに感染したと推計されています。その結果,HIV感染者及びエイズ患者は4,000万人に上っています。アフリカのHIV/エイズは結核の流行に油を注いでいるようなもので,アフリカでは毎年結核が10%増えています。UNAIDS及びWHOは,2005年までに300万人が抗HIV治療を受けられるように「3by5(スリー・バイ・ファイブ)」という目標を掲げており,今やエイズまん延地域では結核対策には結核治療とエイズ治療の併用が必要である,としています。結核撲滅のためパートナー間のさらなる協調が不可欠です。
「ワシントン公約」の達成状況と成果
 2001年,ワシントンにおいて行われたパートナーズフォーラム初会合では,パートナーシップの枠組み及びストップ結核の世界計画が是認され,下記の「ワシントン公約」が採択されています。目標と達成状況は下記のとおりです。
来るべき50日以内に−2001年末までに
*高まん延国は世界目標達成の国家計画を完成する。→達成された。
 *GFATMに結核を含める。→達成された。
来るべき50週間以内に−2002年末までに
*世界の患者の35%をDOTSで治療する。→達成された。
*GDFはあらたに患者100万人に薬剤を提供する。→達成された。
■来るべき50カ月以内に−2005年末までに
*世界の患者の70%をDOTSで治療し,その85%を治癒させる。→未だ達成されていない。
■来るべき50年以内に−2050年末までに
*結核が公衆衛生上問題ではなくする。→未だ達成されていない。

おわりに
 世界結核デーに向けて,国レベルでもパートナーと連携し,目標数値だけが一人歩きすることなく質の高い医療サービスを提供するために,地道な人づくり及び体制づくりの重要性を強調していく必要があります。また,マスメディアなど通じて的確な情報提供やDOTSというブランドのマーケティングも進めていくことが大切です。

情報出典
Annex 1 Second Stop TB Partners' Forum, 24-26 March 2004, New Delhi, India
The Stop TB Campaign, World TB Day 2004 and the 2nd Stop TB Partners Forum, Themes and Strategy
UNAIDS/WHO2003年末現在の状況
ストップ結核パートナーシップホームページhttp://www.stoptb.org/
平成15年12月12日外務省プレスリリース
キャプション 都市型DOTSの推進運動(ネパール)
2003年世界結核デー「あなたもDOTSできっと治る、私のように」もご覧ください。




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