第26回TSRU会議
〜結核サーベイランス研究会〜
平成12年5月10日〜12日/東京

結核研究所疫学研究部 統計解析科長 大森正子

 2000 年のTSRU(Tuberculosis Surveillance Research Unit) 会議は5月10日〜12日、東京の市ヶ谷で開催された。アルカディア市ヶ 谷10階の開放的なロビーからは、眼 下に広がる外濠沿いの木々の新緑を 眺めることができ、小さいながら都 心のオアシスを感じさせる心地よい 会場であった。今回の世話人は結核 研究所森亨所長で、99年3月のヘル シンキでの会議以降、1年2カ月ぶ りの会議となった。
 TSRU は、66年にオランダ結核 予防会とWHOの働きかけでIUA T(現在のIUATLD)の下部組 織としてつくられた会とのことで、 規模は小さいながら持ち回りで会議 を開き今日に至っている。この会は、 初めは低蔓延国の結核対策のあり方 を追求し、現在の結核疫学の評価に 重要な方法論が論じられ、その後会 員の国で実践されるという経緯を踏 んできた。その中心であったのはオ ランダの故スティブロ博士であるが、 今回の討議の最中も、参加者の一人 が、彼の聖書とも呼ぶべき初感染発 病、内因性再燃、外来性再感染発病 の図をさらさらと白板に描いて議論 する一幕もあり、感慨深い一瞬で あった。
 現在のTSRUは低蔓延国に加え、 高蔓延国、中蔓延国の問題も取り上 げるようになったが、それに伴い研 究報告や事業報告的な発表が増えて きたようである。各国で結核対策に 携わる参加者が、IUATLDやW HOからの参加者にWHOが各国に 求めている情報や評価について現場 サイドからの問題や意見を述べる場 面もあった。
 今回の参加国は15カ国とIUAT LD、WHOであり、参加者は会員 18名、ゲスト 35名であった。日本で の開催は13年ぶり2回目で、日本か らは17名が参加し、9名が発表した。
 2日半の会議の進め方は、半日ご とのセッションが設定され、各5〜6題の演題発表と簡単な質疑応答の 後、助言者がセッションすべての発 表について15分間講評し、さらに会 場との討議を約1時間にわたって行 うものであった。このことからも、 一般の学会に比べかなり討議を重視 しているのが分かる。それぞれの セッションの題と内容は以下の通り である。
(1) 健康経済(貧困と結核、DOT Sのコストと効果2編、米国刑務 所での結核感染者の発見とコスト、 TBワクチンの世界的な需要)
(2) 結核問題の大きさと傾向―対策 の影響(日本の結核疫学2編、結 核の無作為調査、タンザニアの結 核患者のHIV陽性率の傾向、多 剤耐性結核が高い地域での治療効 果の理論的推計)
(3) DOTS―結核対策の組織的な 面から(バングラデシュ都市部と ネパール高地、ネパールでの受診 ・診断の遅れの性差、オランダの 移民の結核患者スクリーニング、 中進国での結核対策問題、フィリ ピンの新しい結核対策紹介)
(4) RFLP研究(ノルウェーの移 民と自国民のクラスター分析、オ ランダの結核感染の背景、沖縄の 分子疫学研究、韓国の高校での結 核集団感染)
(5) 自由発表(スイスの治療成績、 ツベルクリン調査の見直し―モデ ル分析から、ツ反の硬度と結核感 染の関連性の検討、オランダから 高蔓延国への旅行者の感染危険、 タイ国北部のHIV蔓延地での多 剤耐性結核)
 なお、次の会議は2001年3月 にスイス(場所は未定)で開催され る予定である。


Updated 00/10/13