平成15年度全国結核対策推進会議に参加して




名古屋市港保健所保健予防課長
小田内 里利


平成16年2月27日、「全国結核対策推進会議」が第一製薬本社ビル(東京都中央区)で開催された。
会議の開催にあたり、厚生労働省結核感染症課塚本明弘課長補佐から挨拶があり、本会議は始まった。

平成15年度結核対策特別促進事業の紹介

 @鳥取県の老人保健施設における結核予防対策について、鳥取県福祉保健部健康対策課予防係の山根貴徳先生から発表された。鳥取県は65歳以上の人口割合が22.6%と全国7位の高齢県で、結核新登録患者の6割が70歳以上であることから高齢の結核患者への対応が課題となっている。平成12年度から老人保健施設の入所者を対象に喀痰検査を実施、平成13年度からは施設で所長による結核についての出張衛生教育「出前講座」を開催し、好評であった。これにより、施設職員、入所者の結核への意識が向上し、患者の早期発見へつながった上、施設と行政のネットワークが強くなり、今後の地域DOTSの推進へとつながると思われた。

 A宮城県気仙沼保健所鶴若美亜先生(当日は村上れい子先生が代理で発表)からは、精神病院における潜在患者発見事業について紹介された。管内の約250床を持つ精神病院では、長年継続的に結核患者の発見があり、平成12年度には集団感染も疑われた。施設では、換気等の空気環境が悪く、大部屋であるという精神病院特有の特徴を持ち、職員の結核に対する意識も低かった。そこで、胸部レントゲン検査、職員の研修や病院内の空気環境測定検査を実施した。さらに、病院の熱意もあり、職員の意識改革、施設内環境整備がなされた。

 B兵庫県洲本健康福祉事務所(洲本保健所)の吉野由実子先生からは、淡路圏域における結核患者に関する支援会議について発表があった。この会議は、圏域内の唯一の結核病床を持つ病院において3ヵ月に1回の割合で開催され、病院関係者と保健所の保健師で構成されており、院内DOTSの推進、ケース検討、情報交換、服薬手帳の活用、患者の療養プログラムの作成等を協議している。これにより、病院と保健所の連携が図られた。今後はDOTS事業の拡大推進が課題である。

 C結核研究所対策支援部保健看護学科の永田容子先生からは、地域DOTS事業のアンケート結果について報告された。地域DOTS事業の取組状況及び服薬確認方法別(外来DOTS、訪問DOTS、連絡確認DOTS)服薬支援体制について、125自治体の583保健所別の現状を平成15年7月に実施したアンケートを基に説明した。

 D結核研究所対策支援部企画・医学科長の星野斉之先生から助言があり、高齢者や精神障害者の結核診断の信頼性、保健所の結核対策におけるセールスポイント、服薬支援をスーパーバイズする方法等の問題提起がなされた。

接触者健診 −何をどう強化するか−

 QFT:全血インターフェロンγ(IFNγ)応答測定法(QuantiFERON-TB第2世代:QFT2G)について、結核研究所抗酸菌レファレンスセンター免疫検査科の原田登之先生、ちば県民保健予防財団(結核予防会千葉県支部)の鈴木公典先生、福井県福井健康福祉センターの宮下裕文先生から総論的説明とQFTの実際の利用状況について、また、札幌市保健所の三觜雄先生からRFLP検査について報告があった。結核の感染を診断するためのツベルクリン反応検査の問題点をクリアするために開発されたQFTは、とても興味をそそられる検査であるが、その使い方を間違えると既感染との区別がつかず、意味がなくなる。定期外健診時の化学予防対象者を選択するためには、きちんとした疫学調査を実施し、健診のプログラムを組み立てた上でツベルクリン反応検査を実施することが重要であり、判定基準から選定された化学予防対象者にQFTを実施すると、不要な予防内服を回避できる。その上で、接触者から患者が出たかどうかを確定するために初発患者のRFLPを実施しておくと有効である。
 最後に、結核研究所長の森亨先生から「より効率的・よりきめ細かな接触者健診の実施に向けて」講演があり、今後の化学予防の方向やBCGの将来についてお話を伺った。

       原田先生     鈴木先生     宮下先生     三觜先生

おわりに

 結核対策の一端を担っている我々の願いは、病気を早期に発見し、見つけた患者を確実に治し、患者が周りの人に感染させることなく、また、たとえ感染させたとしても発病を防ぎ、仮に発病した場合には早期に発見することである。その思いは、自らが結核対策に加わっているという「自覚」と、あれもやろう、これもやらねばという「熱意」を、疲れた体に鞭打ってやり遂げる「がんばり」が支えている。
 しかし、ご多分に漏れず、名古屋市の保健所は政令市の保健所であり、健診等のサービス行政と、健康危機管理の柱である公衆衛生行政の両方を業務としており、得てして日常の業務に振り回されているのが現状である。また、研究機関のように公衆衛生の追求を極められないジレンマを抱え、常に悩み迷いながら働いている我々は、「熱意」が冷めてしまう不安を抱えながら日々を過ごしている。
 その中で、今回の会議は、結核対策のうち公衆衛生行政のPlanとDoを受け持っている我々が、井戸の中のかわずにならず、今一度事業を見直すSeeのためにとても良い場であり、事業を見直す中で、次のPlanへの気づきが生まれる。
 保健所に勤める我々は、口から生まれたと言われるほどみんなしゃべることが大好きである。今回の会議も熱気むんむんで、その中で目いっぱい語りあうことでそれぞれが多くのエネルギーを吸収できた。願わくはこの会議に、今回以上のもっと多くの方が参加可能となり、「結核を減らしたい」という意識を持って、「結核患者を治すためなら」と「燃える」機会をこれからも継続して設けて頂き、今後も大いに発展・充実してほしいと感じた。



Updated04/08/11