公益財団法人 結核予防会結核研究所・周辺施設

結核対策に関するQ&A

ページ先頭

 このQ&Aは、結核対策に関してよくある質問の回答例をご紹介しております。

結核の基礎知識に関する資料は、「結核とは」http://www.jata.or.jp/about.php のページもご参照ください。
「結核の常識」「結核の基礎知識」「結核Q&A」が掲載されています。

1. 検査

(1) 喀痰塗抹・培養検査

吸引痰等での塗抹検査

気管支内視鏡検査に伴う各種検体、「咽頭ぬぐい液」、吸引チューブによる「吸引痰」や「胃液」で結核菌陽性となった時、感染性の高さについて、どのように考えればよいのでしょうか?

上記の場合、結核の診断の有力な証拠となりますが、「感染性の高さ」の評価については根拠となる研究結果が乏しいため、可能な限り「喀痰検査」を実施したうえで、胸部X線検査所見(明らかな空洞の有無)や呼吸器症状、診断のきっかけ(健診発見か有症状受診による発見か)などの情報も含めて「感染性の高さ」を総合的に判断することが望まれます。
また、結核患者の気管支鏡検査を十分な防護がなく実施することや、これに立ち会うことは感染性がある場合に感染の危険性が高くなると考える必要があります。

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塗抹検査が±(ガフキー1号)の場合の対応

喀痰塗抹検査が±(ガフキー1号)の場合、どう対応すればよいでしょうか?

塗抹検査が±(ガフキー1号)の場合、検体採取時や検査室内での交叉汚染、食物残渣などによる偽陽性も考えられるので、再度喀痰を採取するか、再度の採取が困難な場合は、同一検体を用いて再検査を行うことが勧められます。
また、診断のためには塗抹検査結果だけでなく、胸部X線検査や核酸増幅法の結果と合わせて相互に矛盾がないか検討します。

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塗抹陰性・培養陽性の感染性

塗抹検査結果が陰性で、培養検査結果が陽性の時は、感染の心配はないでしょうか?

喀痰塗抹陰性で感染性が低いということは,検査に適した喀痰が採取されて、かつ、複数回(3回連続)検査を行って、いずれも塗抹陰性である場合を前提とします。この条件を満たした検査結果の塗抹が陰性であれば、疫学的には塗抹陽性に比較して感染のリスクは低いと考えられます。しかし、診断時の医療機関で検体として不適切な喀痰の塗抹検査結果が陰性であった場合,その後に紹介された医療機関での検査で、塗抹陽性となることもあります。

一方、HIV感染が問題になっている米国の分子疫学調査に基づく報告では、患者の18%が塗抹陰性・培養陽性の患者から感染を受けていたとの報告があり、個々の事例における感染の可能性に関しては、接触者側の免疫学的な要因も考慮に入れる必要があります。よって、培養陽性で塗抹陰性の場合に感染性がないとは言えません。
また、接触者健診における感染性の高さの判断については、胸部X線検査結果も合わせて検討する必要があります。(「接触者健診の手引き(改訂第6版)」P.20)

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MGITと小川培地による培養検査で結果が異なる場合

MGIT(液体培地)と小川培地(固形培地)による培養検査で一方のみ陽性であった場合どう判断すればいいでしょう?

菌量が非常に少ない場合に、検体中に培養可能となる結核菌が含まれる確率の問題でいずれかの一方の培養検査結果のみが陽性になることがあります。
従って、検査方法によらず、いずれかの検体が陽性であれば「培養陽性」と判定します。

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(2) インターフェロン-γ遊離試験 (Interferon Gamma Release Assays ; IGRA)

IGRAの適応年齢

IGRA の適応年齢について教えて下さい。

ここでは令和4年1月に改訂された「接触者健診の手引き(改訂第6版)」をもとに回答いたします。

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乳幼児へのIGRAの適用

第4版までは、乳幼児におけるIGRA(QFT-2G)の感度不足を考慮して、ツベルクリン反応検査(以下、ツ反)を優先していましたが、QFT-3GとT-SPOTを用いた最近の研究成果を踏まえ、改訂第5版では①乳幼児に対してもIGRAを基本項目の一つとしIGRAとツ反の併用(受診者の負担軽減を考慮して、できるだけ同時実施)を推奨することとしました。しかしながら、これは健診方法の大きな変更であり、健診の実施体制等の事情によって②ツ反を優先することも選択肢の一つとします。
ただし、患者との接触状況等から感染リスクが高いと判断された事例には、IGRAを追加実施するとなっています。(先に実施したツ反で「結核感染あり(要精査)」と判断された場合は、IGRAの併用を省略してよい。)

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高齢者へのIGRAの適用

第IGRA適用年齢の上限は改訂第5版でも第4版と同様に設定せず、「低まん延で高齢者への結核の偏在化が顕著な地域」においては,濃厚接触者と考えられる高齢者にもIGRA の積極的な実施を推奨しています。

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乳幼児の潜在性結核感染症(LTBI)の診断

乳幼児の活動性結核(発病後)に対するIGRAの感度をそのまま乳幼児のLTBIにも適用できるかは不明です。小児の結核感染診断におけるIGRAの有用性を検討したsystematic reviewにおいても、IGRAは5歳未満の「未発病感染例」を正確に検出できない可能性があることを指摘しています。
このため、乳幼児のLTBIに対するIGRAの感度不足の可能性を考慮して、IGRA単独ではなく、ツ反の併用が望ましいと記載されており、たとえば、BCG既接種の乳幼児の健診においてIGRA 陰性であっても、ツ反が「強陽性」の場合は「感染あり」とみなすなどの対応が考えられます。

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判定保留の考え方

QFT-3GとT-SPOTの判定保留の解釈の違いについて教えて下さい。

QFT-3Gの判定保留は、感染の可能性が高い場合(例えば、接触者健診において多くの陽性者が発見された場合)に、陽性と同様に感染者として扱うことにより陽性的中率を向上させ、感染者を見逃すリスクを小さくするために設定されています。T-SPOTの判定保留は、スポット数が8個以上の陽性あるいは4個以下の陰性の判定に対して、スポット数がわずか1~2個の違いの範囲(5~7個)は、検査の信頼性が低くなることから再検査が必要な領域とされています。

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2. BCG

(1) 接種に関して

上腕以外に接種を希望された場合

皮膚炎等により上腕に接種できない場合や、美容上の理由で他の部位への接種を希望される場合のBCG接種について教えてください。

予防接種実施規則によってBCG接種の場所は、「上腕外側のほぼ中央部」と定められていますので、別の場所に接種することは認められていません。

皮膚の治療が必要な場合は、皮膚症状が改善された後に接種を行うことをお勧めします。アトピー性皮膚炎がひどく、BCG接種する部位がジクジクしているような場合は、皮膚がきれいになるまで待つことになります。副腎皮質ホルモン剤入りの塗布剤は、接種部位に塗っていなければかまいません。
(平成25年改訂 BCG接種に関するQ&A集 森 亨監修)

(参考)予防接種実施規則
第五章 結核の予防接種
(接種の方法)
第十六条 結核の定期の予防接種は、経皮接種用乾燥BCGワクチンの懸濁液を上腕外側のほぼ中央部に滴下し、管針法により一回行うものとする。
2 管針法は、接種部位の皮膚を緊張させ、懸濁液を塗った後、九本針植付けの管針を接種皮膚面に対してほぼ垂直に保ち、これを強く圧して行うものとする。
3 接種数は二箇とし、管針の円跡は相互に接するものとする。

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接種の針跡の数が少ない場合

BCG接種の針痕が少ない場合、どのように対応したらよいでしょうか?

BCG接種技術の評価のため、針痕数の調査が勧められており、良好な接種技術であれば平均15個以上の針痕が残るとされています。しかし、個々の被接種者において、針痕数が接種後の免疫能と相関するとは限らないため、針痕が少ないことを理由に再接種を行うことは勧められません。
ただし、同じ接種者の集団について針痕を観察し、針痕数が全体的に少ない場合は、接種技術に問題があることもあるので、次回からの接種を改善し適切に行う必要があります。

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BCG未接種で定期のBCG接種の標準対象期間を過ぎた場合

BCG未接種で定期のBCG接種の標準対象期間を過ぎた幼児や児童への接種は、どうすべきでしょうか?

1歳を過ぎた幼児に対しても BCG接種による免疫効果は得られると考えられ、結核性髄膜炎等の重症結核は4歳位までに多いことから、実施する意味があると思われます。ただし、特定の疾患による場合を除き、予防接種法に規定された接種期間を過ぎてしまった場合、任意のBCG接種となるため費用負担が生じます。また、接種期間内の接種で健康被害が生じた場合、予防接種法に基づく救済制度の適用が検討されますが、任意接種では一般の医薬品の副作用と同じ「医薬品医療機器総合機構」に基づく救済制度の検討対象となります。
そのため、結核高まん延国や地域に居住することが予定される等により、感染・発病リスクが高い場合にのみ接種の検討することになるかと思います。

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(2) コッホ現象

コッホ現象を疑った乳児のツベルクリン反応検査(以下、ツ反)時期

コッホ現象を疑った乳児のツ反の実施時期について教えて下さい。

接種したBCGによる免疫が成立する前にツ反を行うことが重要です。従ってBCG接種後1週間以内、遅くとも2週間以内のツ反の実施が勧められます。

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コッホ現象に類似した反応

いわゆる「コッホもどき」(コッホ現象に類似した皮膚所見が見られるが、結核感染していない場合)とは、どのような症状のことでしょう?

結核に感染していなくてもBCG接種後2,3日以内に発赤等の反応が出現し、その後一度それらの反応が消退したのちに、接種後10日から2週間頃、再び反応が強くなる二相性となることがあります。最初の数日以内の皮膚反応と、およそ10日以降の皮膚反応から成り立っており、前者は非特異的な反応と考えられ、後者は通常のBCG初接種の局所反応の経過に一致します。
真のコッホ現象では最初に強い反応が出て、それが緩やかに消退していくという単相性の経過をとります。

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(3) 副反応

接種後腋窩リンパ節の化膿

BCG接種後腋窩リンパ節の化膿には、どのような処置を行ったらよいでしょうか?

BCG接種後、接種側の腋窩リンパ節が腫大することがあり、ほとんどが特別な治療をしなくても軽快しますが、時にリンパ節が化膿して皮膚に穿孔することがあります。この場合、局所の清潔に留意して経過観察し、抗結核薬は不要と思われます。

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(4) 膀胱癌のBCG膀胱内注入療法

膀胱癌の治療でBCG膀胱内注入療法を受けた数カ月後に尿のPCRの結果、膀胱結核として届け出があり、イソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)の3剤内服治療を開始しました。BCG膀胱内注入療法とPCRの検査結果には関係があるのでしょうか? なお、この患者に、肺結核、腎結核の合併はありません。

膀胱癌のBCG膀胱内注入療法では、週1回40~80mgのBCG製剤を6~8回、膀胱内に注入しますので、その副作用としてBCG菌が粘膜下層に肉芽腫を作ることがあります。BCG菌はウシ型結核菌を継代培養して弱毒化したワクチンであり、結核菌のPCRで陽性を示すことから、尿の結核菌PCRが陽性となることがあります。日本BCG研究所、結核研究所でヒト型結核菌とBCG菌の鑑別検査が可能です。
治療終了後も培養またはPCRで長期に菌が認められる場合は、症状がなくてもイソニアジド(INH)単独投与をすることもあります。
頻尿、排尿時痛などがある場合はイソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)による治療が有効です。まれには胸部に陰影が現れる人もいますが、その場合はBCG菌かヒト型結核菌かを鑑別する必要があります。ただし、事前に尿路結核でないことを確認するのが前提です。

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(5) BCG接種に関連した資料

「BCGワクチンは結核予防ワクチンです」リーフレットの請求

「BCGワクチンは結核予防ワクチンです(保護者用リーフレット)」を頂きたいのですが、どの様に手続きをすればよいでしょうか?

このリーフレットは日本ビーシージー製造株式会社が作成しています。下記ページから資料の請求ができます。他にも、DVDや下敷き、ポスターなども掲載されています。

日本ビーシージー製造株式会社
https://www.bcg.gr.jp/medical/bcg.html

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3. 治療

(1) 服薬中の注意

イソニアジド(INH)内服中の食事の注意

内服中の食事で注意することはありますか?

通常の食事で問題ありません。
ただし、頻度はまれですが、イソニアジド(INH)内服中に、ヒスチジンを多く含有する魚 (マグロ、カツオ、ブリ、サバ等)の極度の大量摂取によるヒスチジン中毒(頭痛、紅斑、嘔吐、掻痒)や、チラミンを多く含有する食物(チーズ等)による血圧上昇と動惇が現われることが報告されています。

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内服時間

結核の薬は、いつ内服すればいいでしょうか?

リファンピシン(RFP)は、食前の服用の方が吸収がよいとされていましたが、食後のほうが胃の負担も少なく、効果に大きな差はないことが明らかになり、現在は他の薬と一緒に1度で確実に内服することが勧められています。
結核の治療のためには、確実な内服が大切なので、自分の生活習慣に合わせて、最も忘れにくい時に服用するとよいでしょう。

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(2) 妊娠・授乳中の治療

妊娠中の結核治療

妊娠中に結核の治療を受けても、胎児への影響はありませんか?

妊娠中、イソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB) を内服した時の先天異常の発生率は、薬を使っていない人と、違いはありません。
出産時に母親が肺結核を発病していると、新生児に結核を感染させる危険が生じますので、その前に治療を開始すれば、児が生まれたときに感染性が低下します。胎児への胎内での感染による先天性結核は世界でも100例くらいしか報告がない稀な疾患ですが、母体の治療をした方がリスクを減らすことができると考えられます。
ただし、「全ての薬には潜在的な毒性があり、妊娠初期3ヵ月間はイソニアジド(INH)を控えるべき」、という意見の医師もいます。
米国CDCのガイドラインでは、妊娠中のイソニアジド(INH)服用時のビタミンB6の服用を推奨しています。

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授乳中の結核治療

授乳中に結核の薬を飲んでも大丈夫でしょうか?

結核の薬は母乳への移行は少量であり、これまで乳児への影響は指摘されていません。米国CDCのガイドラインでは、イソニアジド(INH)を服用している授乳中の母親にも、ビタミンB6の服用を推奨しています。

ちなみに、授乳中の潜在性結核感染症治療については、平成25年3月に日本結核病学会予防委員会・治療委員会より示されました「潜在性結核感染症治療指針」では、下記のように記載されています。
「授乳について添付文書上は「授乳を避けること」とあるが,同じくATS/CDCガイドラインでは,「これまでに授乳による児への影響は報告されていないことから禁忌ではなく,児にはビタミンB6 の補充を行うべき」とされています。

「潜在性結核感染症治療指針」
http://www.kekkaku.gr.jp/commit/yobou/201306.pdf

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(3) 薬剤耐性例

薬剤耐性を疑う患者の治療

当院は小規模な結核病院ですが、過去の結核治療中断歴より薬剤耐性の可能性ありと考えている患者の治療法について相談できますか?

過去の治療中断歴や、感染源と推定される患者の薬剤耐性検査の結果などから、薬剤耐性の可能性の高い患者の場合、結核専門医療機関等へ相談して下さい。

「薬剤耐性結核の医療に関する提言」
http://www.kekkaku.gr.jp/pdf/aninfo-201106teigen.pdf
「結核医療高度専門施設」
(結核に関する特定感染症予防指針 平成28年11月25日改正)
http://www.jata.or.jp/dl/pdf/law/2016/1125_2.pdf

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(4) 肺外結核の治療

リンパ節結核

リンパ節結核の治療について教えてください。

薬剤耐性のないリンパ節結核の場合、肺結核に準じた標準治療により良好な治療結果が得られています。なお、外科的治療の適応は、化学療法で改善が見られなかった例や腫脹して不快な状態などが対象となります。

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(5) 潜在性結核感染症(LTBI)の治療と経過観察

妊婦に対するLTBI治療

平成25年3月に日本結核病学会予防委員会・治療委員会より示されました「潜在性結核感染症治療指針」では、下記のように記載されています。
「妊婦に対するLTBI 治療については,INH の添付文書では「投与しないことが望ましい」とされているが,ATS/CDCガイドラインでは,「最近の感染やHIVで結核菌の胎盤への血行性散布または発病が起こりやすい状態では,母児とも危険な状態に曝される可能性があるので,肝機能障害に対して十分注意をしたうえで治療したほうがいい」とされている。」

「潜在性結核感染症治療指針」
http://www.kekkaku.gr.jp/commit/yobou/201306.pdf

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BCG未接種の乳児のLTBI治療

BCG未接種の乳児が、感染性のある結核患者と濃厚接触し、直後のツ反で陰性、胸部X線検査も異常なしでLTBI治療を開始しました。
① 2ヵ月後のツ反で陰性でもLTBI治療を続けたほうがよいでしょうか?
② LTBIの6ヵ月治療終了後、BCG接種はいつが適当でしょうか?

① 一般的には結核に感染した後、ツ反が陽転するまで(=この期間を「ウィンドウ期」と呼びます)に3~8週間を要するとされていますが、乳児はさらに長い期間を要するケースもみられ、感染源との最終接触から約3ヵ月(12週)後のツ反結果によって、最終的な感染判断を行うことが適当とされています。
3ヵ月後にツ反陰性が確認されれば「感染していなかった」と判断し、その時点でLTBI治療を中止し早期にBCGを接種することが適当と考えます。また、BCG接種後にはコッホ現象が疑われる局所の所見の有無を慎重に観察することも大切です。
一方、多量排菌の感染源と濃厚かつ頻回な接触状況や、同じ程度の接触があったグループ内の感染割合が高く「感染リスクが高い」と評価される場合では、感染後早期からのLTBI治療により菌の増殖が抑えられたため、3ヵ月後ではツ反が陽転に至らず、治療を中断してしまうと再度菌が増殖して、発症に至る可能性もあることから、3ヵ月目のツ反陰性であっても、6ヵ月間の治療を継続することが必要な場合も考えられます。
② LTBIの治療を6ヵ月間終了した場合でも、終了直後に実施した感染診断結果が陰性のままであれば、間を置くことなくBCG接種を行うことが可能です。

※その他注意すべき点
3ヵ月後の最終的な感染判断までの間、概ね1ヵ月毎に対象児の健康状況やLTBI治療への受け入れについて確認することも大切です。
特に、感染リスクが高いと評価されるケースでは中途においても感染判断を反復し、(例えば2ヵ月時にもツ反を実施)、「感染」例を早期に把握して、適切な発症診断の適用(胸部X線写真では検出できない肺野及びリンパ節病巣を見逃さない為に造影CTも積極的に適用)することを心がけることも望まれます。

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LTBI治療中におけるBCG接種の効果

LTBI治療中のBCG接種は効果が減弱しますか?

BCG菌はウシ型結核菌を継代培養して作られた生ワクチンで、イソニアジド(INH)に感受性があり、投与中に接種をしても殺菌されて効果は減弱するため、接種は勧められません。

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LTBI6ヶ月治療後のQFT値

LTBIへの6ヵ月間の治療の後もQFTの値が高値のままですが、治療の延長が必要でしょうか?

一般的にLTBIの治療によりQFTの値は低下する傾向にありますが、6ヵ月の投与後も依然としてQFTが高値のままのことも少なくありません。そのため、LTBIの治療の効果判定にQFTを用いるのは不適当と考えられます。

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LTBI診断時の発病確認におけるCTの必要性

LTBIの診断にあたって、発病の有無の確認にCTは必要でしょうか?

胸部X線検査によって発見できなかった病変をCTで発見できることもありますが、CTによる被ばくの大きさと費用を考えると、全対象者にCTを行うのではなく、対象者の同一集団の感染率が高い場合や既に発病者がある場合、対象者に免疫学的な問題がある場合や咳・痰などの呼吸器症状がある場合など、発病している可能性が高いと考えらえる者に実施するのが妥当とされています。

「潜在性結核感染症治療指針」
http://www.kekkaku.gr.jp/commit/yobou/201306.pdf

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LTBIの単剤治療における耐性菌の出現

LTBIの単剤投与は耐性菌の出現につながりませんか?

一般的にLTBIでは体内菌量が少なく、確率論的に耐性菌が選択される可能性は低いと考えられております。耐性菌の出現対策には、服薬中断しないことが重要です。

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多剤耐性結核患者の接触者へのLTBI治療

初発患者がイソニアジド(INH)とリファンピシン(RFP)の両方に耐性のある多剤耐性結核の場合、その接触者へのLTBIの治療はどのようにしたらよいでしょう?

日本結核病学会予防委員会・治療委員会の「潜在性結核感染症治療指針」において、治療レジメンの勧告は行っておらず、服薬なしで厳重に経過観察を行い、発病した場合に速やかに治療を開始することも選択肢として挙げられています。
米国では、多剤耐性結核感染者のうち、発病のリスクが高い場合(例えば HIV 感染者)には、 感染源の他薬剤への感受性により、ピラナミド(PZA)とエタンブトール(EB)やピラナミド(PZA)とフルオロキノロン(NQ)の2剤による6ヵ月間の内服を考慮するようにと勧告されています。

「潜在性結核感染症治療指針」
http://www.kekkaku.gr.jp/commit/yobou/201306.pdf

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4. 接触者健診

航空機内接触者健診基準(接触8時間以上)の適応

航空機内では、接触者健診実施の対象者について、8時間以上の接触が基準となっていますが、それ以外の場合でも、接触状況の基準に8時間以上の接触があったかどうかを適応することができるでしょうか?

WHOの「航空機旅行における結核対策ガイドライン」では、航空機内に8時間以上、同乗していた場合、結核の感染リスク増大の可能性ありとの見解が掲げられていますが、最近の旅客機は空調システムにHEPAフィルターが装着されており、1時間に6~20回の頻回の換気を行い、換気の際の気流は天井から床の一方向に限られているため、この基準をそのまま航空機以外の事例に適応できるとは限りません。
「接触者健診の手引き 改訂第5版」においても、航空機内での8時間以上という基準は、最近の旅客機の良好な空調システムを念頭に置いたものであり、換気が不十分な部屋等での接触、あるいは医療現場での接触の場合は、短時間でも濃厚接触と判断すべき事例があるので、環境面を含めてより慎重に評価する必要があると述べられています。

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学生の結核患者における学校への連絡と協力要請

同じクラスの生徒数名の結核感染診断から学校内での感染を疑う場合、学校への連絡と協力要請の必要性について教えてください。

一般に若年者の集団に複数の発病者・感染者が発見された場合、保健所は、感染源の発見や感染拡大防止の目的で感染症法に基づく接触者健診の実施の検討が必要になると思われます。接触者健診を実施するにあたって学校の協力が必須であるため、保健所は保護者に十分説明した後、学校長へ連絡することが望ましいと考えます。

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再発患者の接触者への再接触者健診

再発した患者の再接触者への2回目の接触者健診について教えてください。

再発した時の排菌状況と接触状況から感染の可能性を検討し、接触者健診の必要性について検討することとなります。前回の接触者健診においてLTBI治療の対象となった方でも、ツ反での感染診断であったために未感染であった可能性がある場合には、IGRA検査の適応も検討することになります。
また、結核感染の既往がほぼ確実であっても、免疫を低下させる疾患を有する場合や免疫抑制作用のある薬剤を使用している場合、高齢で体力が著しく低下している場合等は再感染の可能性もあるので、慎重に検討した上で対応を進めることが必要となります。

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結核患者との接触後3ヵ月以上経過した場合

結核患者との接触後3ヵ月以上経過した場合の接触者健診において、IGRA検査とLTBI治療の意義はありますか?

IGRA検査はウィンドウ期を考慮して、結核患者との最終接触から2~3ヵ月後の検査が推奨されています。結核感染後の発病のリスクは、最初の2年間が高いので、3ヵ月以上経過した場合であっても2年以内ならばIGRAを実施して、LTBI治療を行う意義はあると思われます。
また、「接触者健診の手引き(改訂第5版)」では、患者との最終接触から2~3ヵ月後の健診の結果、接触者集団の結核感染率が極めて高いことが判明した場合、患者との最終接触から6ヵ月後にIGRA の再検査の実施を推奨しています。

「潜在性結核感染症治療指針」
http://www.kekkaku.gr.jp/commit/yobou/201306.pdf

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5. 外国人患者への対応

入院治療中の帰国

喀痰塗抹陽性の肺結核で入院治療中の外国人患者が、治療半ばで退院し自国で治療したいと考えています。帰国の際、8時間を越えなければ飛行機での移動は可能でしょうか?

感染性がある期間は、
感染症法(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO114.html)における入院勧告の入院基準及び退院基準に基づく治療になり、一般の航空機での移動はできません。
治療途中で感染性がある場合は、医療機関や保健所からの情報に基づき、各航空会社は搭乗を拒否することができます。

WHOガイドライン「Tuberculosis and air travel 第3版」
http://whqlibdoc.who.int/publications/2008/9789241547505_eng.pdf

なお、外国人が帰国後の治療継続を希望しても、出来る限り日本で治療を終えることを推奨します。その理由としては、海外では使用できる薬に限りがあり、特に副作用が出た場合など、日本と同様の治療が受けられない可能性が高いためです。

それでも帰国を希望され、韓国、中国、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、ベトナム、ネパールへ帰国される方は、BRIDGE TB CARE(結核医療国際連携支援)を利用できます。詳細をご確認ください。

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帰国後のLTBIの治療継続

日本から自国に帰国後、LTBI治療は可能でしょうか?

LTBI治療は国によって対象や方針に違いがあり、結核対策に位置付けられていない場合もあります。従って、治療開始時に治療中の帰国や治療中断の可能性を含めて治療の妥当性を検討し、本人の服用継続の意思を確認する必要があります。
既に日本でLTBI治療を開始し途中で帰国する、あるいは長期出張等で日本を離れる場合、医療機関は、残りの治療期間分の内服薬を処方し、また、保健所とも協力して、内服継続の必要性やLTBI治療の限界、有症状時の受診について改めて説明し、受診のために英文等でLTBIの治療に関しての情報提供書をお渡ししておくなどの治療中断にならない工夫が必要と思われます。

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外国人結核患者への説明資料

外国人結核患者への説明用資料などはありますか?

外国語の患者向けパンフレットや患者紹介状は、資料・勧告集のページにまとめてありますのでご覧ください。

~概要~
◆Stop TB by dots!「結核?!でも心配しないで」15カ国のメッセージ入り
(英語、中国語、韓国語、インドネシア語、モンゴル語、ポルトガル語、タガログ語、ミャンマー語、ベトナム語、ロシア語、スペイン語、ヒンディ語、ネパール語、タイ語)
◆「ひょっとして結核?!結核についてもっと知りたいあなたへ」
(英語、韓国語、中国語)
◆「知識・希望・そして力…結核を治すために」
(英語、ミャンマー語、タイ語)
◆外国語版患者紹介状
(英語、韓国語、中国語)
◆外国語版服薬手帳
(英語、韓国語、中国語、タガログ語、ポルトガル語)
◆外国語版 服薬記録帳
(英語、韓国語、中国語、タガログ語、ポルトガル語、インドネシア語、モンゴル語)
◆外国人の患者様向け 一言メッセージ
(タガログ語、ヒンディ語、ベトナム語、マレーシア語、ラオス語)
◆図譜「コッホ現象について」
(英語、中国語、韓国語、タガログ語、ロシア語、ポルトガル語)
◆BRIDGE TB CARE「結核医療国際連携支援」
(英語、韓国語、中国語、インドネシア語、ミャンマー語、フィリピン語、ベトナム語、ネパール語)

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6. 制度に関する質問

(1) 入退院基準

退院基準を満たさない時点の主治医判断での退院

結核患者の退院について、主治医は、「喀痰塗抹3回連続陰性は確認されていないが退院を検討しており、退院は主治医の判断で決める」と連絡してきました。感染症法の解釈について教えて下さい。

結核患者の治療は患者個人のためであると同時に、公衆衛生上の必要性もあります。入院勧告は感染症法第19条、20条に基づき、都道府県知事に権限が付与されていますが,知事から保健所長に事務委任されていますので、実質上、保健所長がその権限をもっていることになります。入院勧告を行う場合、厚生労働省の示す基準を基に感染症診査協議会の意見を聞きながら、保健所長が決定し、勧告の解除についても国が示す基準に従って、保健所長に職権があると解釈されます。退院基準は保健所長の勧告解除決定の根拠であり、それを超えるものは示されておりません。

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7. 結核の消毒、保管、運搬

(1) 消毒

結核患者が使用した部屋の消毒

結核患者が使用した部屋の消毒等はどのようにすればいいですか?

結核は飛沫・空気感染であるため部屋の換気を十分にし、部屋の清掃は通常行っている方法で実施して下さい。
厚労省の通知「医療施設における院内感染(病院感染)の防止について」では、手が頻回に接触する環境表面は定期的な清掃もしくはアルコールによる消毒となっています。

医療施設における院内感染の防止について
http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/02/tp0202-1.html

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結核患者(疑い患者含む)に使用した器具の消毒

結核患者(疑い患者含む)に使用した気管支鏡や手術器具の消毒は、どのようにすればいいでしょうか?

手術器具等、他の患者の無菌の体内部位に直接接触する器具には滅菌操作を行います。患者の粘膜に接触する器具(気管支内視鏡、喉頭内視鏡、挿管チューブなど)は、湿式低温殺菌法、化学消毒、加熱消毒による高レベル消毒が必要です。気管支鏡は手作業の不十分な消毒による結核菌感染も報告されており使用ごとの自動洗浄(消毒時間の短いフタラール製剤を用いることが多い)が一般的です。リネン、食器については、通常の洗浄で差し支えありません。

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(2) 菌株の保管等

追加試験のための結核菌の保存

多剤耐性結核菌や多剤耐性結核菌以外の結核菌を追加試験のために保存するためにどうしたらいいでしょうか。

≪平成26年11月21日に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部を改正する法律」が公布され、平成27年1月9日に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令」が公布され、平成27年5月21日に施行されました。これにより三種病原体に分類される多剤耐性結核菌の定義が変わりましたのでご注意ください。≫
多剤耐性結核菌の一部(いわゆる「超多剤耐性結核菌」に相当する耐性結核菌)は感染症法の特定病原体等管理規制における三種病原体等に、それ以外の結核菌は四種病原体等に該当します。各病原体ごとに規定されている施設の基準及び保管等の基準に従わなければなりません。

※三種病原体等に分類される多剤耐性結核菌の定義
イソニコチン酸ヒドラジド、リファンピシンその他政令(令第1条の4)で定めるもの(オフロキサシン、ガチフロキサシン、シプロフロキサシン、スパルフロキサシン、モキシフロキサン又はレボフロキサシンの何れかに耐性、かつ、アミカシン、カナマイシン、カプレオマイシンの3種類の薬剤のうち一種以上)に耐性を有するもの。

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保健所への結核菌譲渡までの保管

保健所が結核菌を取りに来るまで、検査室での保管はどうしたらいいでしょうか?また、同様に多剤耐性結核菌の保管はどうしたらいいでしょうか?

保健所から「取りに行きますので保管しておいてください」と言われている場合など、一時的な保管の際には、結核菌の入った密封容器を保管庫に入れて、保管庫は施錠して保管してください。あらかじめ譲渡することが決まっていれば、三種病原体等に該当する多剤耐性結核菌であっても届出の必要はありません。なお、譲渡までの期間は定めておりませんが、遅滞なく実施することとされています。

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(3) 結核菌の運搬

三種病原体等に定義される耐性結核菌の運搬

三種病原体等に定義される耐性結核菌は運搬できますか?

三種病原体は、事業所の外へ運搬する際には各都道府県の公安委員会に運搬の届出を行い、運搬証明書の交付を受ける必要があります。詳しくは厚生労働省のHPを参照してください。

「特定病原体等の安全運搬マニュアル」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou17/pdf/03-34.pdf

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多剤耐性結核患者の喀痰運搬の届出

多剤耐性結核症と診断された患者の喀痰も、運搬時には公安委員会への届出が必要でしょうか?

臨床検体や感染症に罹った患者は、感染症法でいう特定病原体等の対象外です。そのため、公安委員会への届出は必要ありません。

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三種病原体等に定義されない結核菌(四種病原体等)の運搬

三種病原体等に定義されない結核菌(四種病原体等)を送ることができますか?

内国郵便約款によって、官公署、細菌検査所、医師又は獣医師が差し出すものを除き、生きた病原体及び生きた病原体を含有し、又は生きた病原体が付着していると認められる物は郵便物として差し出すことができないと定められています。
郵便事業株式会社のゆうパックによる検体の送付については、一般の民営の宅配便の利用と原則的に同様の規定であり、 世界保健機関策定の「感染性物資の輸送規則に関するガイダンス」等において必要とされている通常の輸送条件の下での包装方法・包装要件に加えて、「ゆうパックを利用して検体を送付する場合の包装に関する遵守事項」に基づいて、安全性を担保するための更なる厳重な措置が規定されております。

「ゆうパックを利用して検体を送付する場合の包装に関する遵守事項」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou17/pdf/120323-02.pdf
「特定病原体等の運搬に係る容器等に関する基準」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou17/pdf/03-59.pdf

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